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「先読み・引き寄せ・構え」で価値を生む ローランド・ベルガー日本法人 代表取締役社長 長島 聡氏

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フォルクスワーゲンのモジュール戦略

 先読み、引き寄せ、構えというアプローチをいち早く実践してきたのが、フォルクスワーゲン(VW)だ。同社では数年に1度、車の開発者だけでなく、社会学者、心理学者など多様な専門家を交えてシナリオプランニングを実施している。10年後、20年後に世の中はどうなっているかを構想し、未来の世界の中で車やモビリティはどうあるべきかを考えるのだ。

 彼らはその後、あるべきモビリティ社会に沿って、それに必要となる車の姿を描く。車のボディタイプ、デザイン、大きさ、機能の幅を具体的にイメージし、製品ロードマップに落とし込んでいく。これは、まさに「先読み」に当たる。

 それができると、ボッシュやコンチネンタルなどのサプライヤーとの対話に入る。すると、サプライヤーも各自のロードマップを持ち寄って、これはうまく合わない、こちらのほうがいいといった具体的な議論が始まる。また、欧州では標準化の推進を目的に、政府、競合、研究機関などがこの輪に加わることも多い。この状況が「引き寄せ」である。

 その結果、企業の垣根を越えて、参加者の間で一定の合意形成の進んだロードマップができあがっていく。そのロードマップに沿って、エンジン、モーター、電池、通信機構、運転支援システムなどのモジュールが用意され、それらを組み合わせて、さまざまな車種が生み出されていく。こうしたお膳立てをしておくのが「構え」である。

 フォルクスワーゲンをはじめとする欧州メーカーが高い開発効率で、時流に合った多様な車をスピーディーに投入できるのは、こうした準備があってのことだ。一方で、VWは車にとどまらずモビリティサービスでもこうした先読み、引き寄せにチャレンジしている。地域を限定して企画中のサービスを投入して仮説検証のプロセスを顧客と共に回している。

 ただ、こちらはステークホルダーが多く、まだ未来の予測精度が十分に上がっていない。この戦略が効果を発揮するにはもう少しトライアンドエラーが必要そうだ。

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