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「先読み・引き寄せ・構え」で価値を生む ローランド・ベルガー日本法人 代表取締役社長 長島 聡氏

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和ノベーションの3原則とは?

 顧客ニーズやその変化を的確に捉えてイノベーションを生み出していくとき、その成否を左右する重要な原則がある。「先読み」「引き寄せ」「構え」の3つだ。

 多くのグローバル企業は母国市場の成熟化と戦いながら次なる成長市場へのチャレンジを続けている。その際、1種類の製品ですべての市場をカバーすることはもちろんできず、各市場で異なるニーズをしっかりと捉えた多様な製品の投入が不可欠となる。ただ、そうした製品の投入にかかる時間は、必要な付加価値の高まりに伴い増加の一途をたどる。一方で開発リソースは無限ではない。むしろ常に不足している。

 そこで、新たな製品やサービスの企画にあたっては、不確実な将来を可能な限り正確に予測すること、その中で自社がどう差別化ポイントを設計するかという「先読み」が重要となる。

 「先読み」では、今後の顧客、社会、そして競合の変化を予想、先回りして、新たな製品やサービス、そしてそれらに必要な技術のロードマップを作成していく。顧客の暮らしに起きている変化の兆候や技術の進化を捉え、今後顧客に必要とされる、もしくは顧客をワクワクさせられる独自の製品やサービスの進化の仮説を描いていくのだ。

 「引き寄せ」では、先読みで生み出したロードマップの仮説を、世の中のトレンドとして定着させる活動を行う。製品の場合は、部品の提供を担うサプライヤーや、製品の利用にあたっての規制をつくる政府などに、ロードマップを開示しながら対話を繰り返す。

 それを通じて、自らの競争優位を担保しつつも、周囲の共感や同意を得られる製品ロードマップへと仕上げていく。さらに、顧客に提示して顧客からのインプットもうまく盛り込めば、企業側が提供したい価値を顧客に欲しいと思ってもらうことも可能だ。

 実際、専門家の意見や群集心理をうまく活用したり、顧客を商品企画に巻き込んだりすることで、先読みが当たる確率を高めることもできるのだ。

 「構え」では、製品の機能や要素、サービス・メニューをモジュールの形で用意し、それらを組み合わせて、さまざまなバリエーションで価値を提供できるようにする。ただ、事前に作成したロードマップに書いてあるものだけを準備すれば、100%顧客を満足させられるというものでもない。常に予測は外れる部分があるからだ。

 そこで、準備するモジュールにはある程度の幅を持たせて予想外の部分にも対応できる工夫をしておく。特に、製品やサービスを投入するまでの時間が長いほど、先読みが難しくなるので構えの幅を広げておく必要がある。また、さまざまなバリエーションの価値をすべてゼロから構築すると大変だが、モジュールを組み合わせる形であれば、短時間で価値を追加できるので、スピードの面でも顧客に驚きを与えられる。

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