AI現場力

AIを「使ってはいけない」作業とは? ローランド・ベルガー日本法人 代表取締役社長 長島 聡氏

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 自分や自社が持ちたい、進化させたい能力を明確に定義し、それ以外はAIに任せればいい。大量にある簡単で進化させる必要のない部分をAI化することが、費用対効果に優れ、かつ生産性の向上につながる活用法といえる。この使い方が、進化し続ける力、つまり中長期的な競争力の担保につながるのである。

匠の技術の形式知化に挑む駿河精機

 精密位置決めと光計測技術のトップブランドの駿河精機は、創業以来50年にわたり、競争力の高い製品を供給し続けているミスミのグループ子会社だ。急速に発展するスマートフォン・タブレットなどのモバイル機器や、車載用センサー分野においては、駿河精機のテクノロジーが欠かせない存在となっている。近年では、ヨーロッパ・アメリカ・アジア諸国など、海外市場にも進出するなどその活躍の場所を広げている。

 この駿河精機には世界に誇れる多くの匠がいる。金属加工において最適な加工条件を見出す力もその匠の能力の1つと考えられてきた。今、社長の丸井武氏が取り組んでいるのは、AIによるこうした加工条件の自動生成だ。匠の技術の形式知化といってよい。大量のデータをとり、深層学習と強化学習を使って最適加工プログラムを自動生成することを目指している。

 まず、画像処理技術や非接触式センサーを使って、CAD/CAMのプログラムによって加工された精度・品質に課題がある加工品と、熟練作業者によって加工された高品質・高精度の加工品の形状・表面の状態を大量に測定していく。

 次に、測定したデータとその加工条件データを使った深層学習で良品の特徴と加工条件の特徴を抽出する。さらに、そうして得られた特徴を初めて知る製品の加工に適用すべく、強化学習で最適加工条件を抽出する。その際、形状・表面の状態の最適化を最優先に条件をつくるという。最後はもちろんその条件でつくられた加工品の評価を行うという流れだ。

 このサイクルをどんどん回した結果、すでに一定の成果をあげているという。今後はさまざまな加工に互換性のあるアプリケーションに仕立てて、加工プログラムの流通市場を確立させることを計画している。

長島聡著 『AI現場力』(日本経済新聞出版社、2017年)1章「AIという幻想から目覚めよ!」、2章「AIで人間の能力を伸ばす」から
長島 聡(ながしま さとし)
ローランド・ベルガー日本法人 代表取締役社長、工学博士。

早稲田大学理工学研究科博士課程修了後、早稲田大学理工学部助手を経て、ローランド・ベルガーに参画。自動車、石油、化学、エネルギー、消費財などの製造業を中心として、グランドストラテジー、事業ロードマップ、チェンジマネジメント、現場のデジタル武装など数多くの プロジェクトを手がける。特に、近年はお客様起点の価値創出に注目、日本企業の競争力・存在感を高めるための活動に従事。

以下のアドバイザーを務める。アスタミューゼ、エクサインテリジェンス、カイゼン・マイスター、リンカーズ、カブク、ドリーム・アーツ、エクシヴィ、ベッコフオートメーション

一般財団法人素形材センター「素形材産業を含めた製造基盤技術を活用した『稼ぐ力』研究会」委員、経済産業省「ファッション政策懇談会」委員、一般財団法人企業活力研究所ものづくり競争力研究会委員。

自動車産業、インダストリー4.0/IoT をテーマとした講演・寄稿多数。近著に『日本型インダストリー4.0』(日本経済新聞出版社、2015年)。

キーワード:経営層、管理職、技術、イノベーション、製造、IoT、ICT、AI、働き方改革、ものづくり

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