ブロックチェーンの未来 金融・産業・社会はどう変わるのか

新ビジネスの可能性広げるブロックチェーンの仕組み 日本総合研究所副理事長 翁百合氏、東京大学大学院教授 柳川範之氏、京都大学公共政策大学院教授 岩下直行氏

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ブロックチェーンネットワーク上での取引:

国境を越えてカネ、モノの取引を展開

 ブロックチェーンがこのように透明で、かつフラットなネットワークの仕組みを基盤としているのは、その根底に草の根的・民主主義的なコンセプトがあるからだ。そもそもブロックチェーンはビットコインを起源とした技術であり、中央集権的な組織や国に依存しない取引の実現を目指して生まれたものなのである。

 ブロックチェーンの特徴の一つに、参加する全員が安全かつ平等に、分散的に情報を共有化しながら「つながり」を実現でき、グローバルにネットワーク展開できるインフラとして機能する、というものがある。誰でも参加できるタイプのブロックチェーンの場合、ノードである構成員は、カネ、モノの取引を、国境を越えて自由に展開でき、世界中どこにいても参加することができる。

 さらにノードが増え、ブロックチェーンのネットワークが拡大すればするほど、影響力が指数関数的に拡大していくという、いわゆるネットワーク効果を発揮することが可能となる。

ブロックチェーンと分散型台帳技術(DLT)

 なお、本書では、ブロックチェーン技術を「分散型台帳技術」として紹介しているが、ブロックチェーン技術と分散型台帳技術(DLT)を分けて解説している文献などもあるので、この点について若干敷衍(ふえん)しておきたい。

 仮想通貨ビットコインが注目され、さまざまな仮想通貨が開発されるようになり、その技術面が着目されるようになったが、その技術がブロックチェーンと総称され、注目を浴びるようになった。その基礎的な特徴の一つに分散型台帳があることはすでに述べた通りである。しかし、現在は仮想通貨以外にもブロックチェーン技術は使われるようになった。ブロックチェーン=仮想通貨という認識が強かったため、仮想通貨以外に使われている同様の技術については、ブロックチェーン技術という用語を使わずに、汎用性のある分散型台帳技術という用語が使われていることがある。

 すなわち、ブロックチェーンという用語は比較的仮想通貨に使われるケースが多く、その応用としてさまざまな場面(金融機関、企業、政府など)で使われる技術として分散型台帳技術という用語が用いられている。

 たとえば、英国政府科学局から2016年1月に公表された報告書("Distributed Ledger Technology: beyond block chain")(※4)でも、ビットコインを中心とする技術を狭義のブロックチェーンとよび、仮想通貨から広く一般的な適用が拡大している技術として、分散型台帳技術を位置づけている。

 しかし、この定義の違いについては広く合意されたものがあるわけではない(※5)。ここでも、分散型台帳技術も含めてブロックチェーン技術と総称している。

(※4)NIRA 総研ホームページより日本語訳が入手できる。

(※5)たとえば、日本ブロックチェーン協会(JBA)は、以下のような狭義、広義のブロックチェーンの定義を提唱している。

翁 百合・柳川範之・岩下直行 編著 『ブロックチェーンの未来』(日本経済新聞出版社、2017年)、「第1部 ブロックチェーンは社会をどう変えるか」から
翁百合(おきな・ゆり)
NIRA 総研理事。日本総合研究所副理事長。慶應義塾大学特別招聘教授。京都大学博士(経済学)。日本銀行、産業再生機構産業再生委員、日本総合研究所理事などを経て、2014年より現職。金融審議会委員などの政府委員を多数務める。著書に『不安定化する国際金融システム』(NTT出版、2014年)ほか。
柳川範之(やながわ・のりゆき)
NIRA 総研理事。東京大学大学院経済学研究科教授。東京大学博士(経済学)。専門は契約理論、金融契約。慶應義塾大学経済学部専任講師などを経て、2011 年より現職。金融審議会委員などの政府委員を多数歴任。著書に『法と企業行動の経済分析』(日本経済新聞出版社、2006 年)ほか。
岩下直行(いわした・なおゆき)
京都大学公共政策大学院教授。慶應義塾大学経済学部卒業。日本銀行入行後、日銀金融研究所・情報技術研究センター長、日銀金融機構局・金融高度化センター長、日銀決済機構局・FinTech センター長などを経て、2017 年4 月より現職。経済産業省FinTech 研究会委員などの政府委員を多数歴任。

キーワード:経営層、管理職、経営、企画、経理、フィンテック、ICT、イノベーション

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