ブロックチェーンの未来 金融・産業・社会はどう変わるのか

新ビジネスの可能性広げるブロックチェーンの仕組み 日本総合研究所副理事長 翁百合氏、東京大学大学院教授 柳川範之氏、京都大学公共政策大学院教授 岩下直行氏

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

分散型台帳技術(DLT:Distributed Ledger Technology):

取引のデータを複数の参加者が分散して管理する

 ブロックチェーンは、今までの帳簿または台帳の発想やコンセプトと何が異なるのだろうか。かつての台帳は、紙に取引内容を書き込むことによって管理されていた。近年では、紙に代わり、情報が電子化(デジタル化)されているものの、特定の組織や人が集中管理を行うという構造は同じである。たとえば、証券取引所などの中央機関が一箇所で管理する、いわば中央集権的な管理だ。

 実は、こうした管理によって引き起こされる問題がある。例にあげた取引所の場合、取引履歴データなどを記帳するためのシステムなどにコストや時間がかかり非効率なだけではなく、サイバー攻撃により情報が失われるというリスクがある。このため、システムダウンを想定したデータバックアップやBCP(ビジネス・コンティンジェンシー・プラン:事業継続計画)対策に多大なコストをかけているのが現状である。

 これに対して、ブロックチェーンの発想は、取引履歴を記録するデータベースをネットワーク参加者で分散して保有し、管理を行うというものだ(図表2)。複数のネットワーク上の参加者のコンピューター同士をPeer-to-Peer(※1)で直接接続し、モノやカネなどの取引情報を互いにやりとりして確認し、その履歴情報を共有し続ける(以下では、コンピューターをブロックチェーンの参加者という意味で、ノードという)。

図表2 集中処理と分散処理の違い

(※1)Peer-to-Peerとは、中央サーバーを用意せず、個々の端末(Peer)がお互いに接続し合うことで成立するネットワークのこと。

参加者間の合意:

取引のデータの整合性について参加者はどう合意するのか

 カネやモノの取引データの整合性について、ネットワーク参加者間でどのように合意するのか。ブロックチェーンで使われている、合意を得るためのメカニズムをコンセンサス・アルゴリズム(合意形成のための計算方法)というが、合意にはさまざまな手法が存在する。

 仮想通貨ビットコインの場合、マイナー(採掘者)(※2)とよばれる人々が、自発的に電気代を大量に費消してコンピューターに計算をさせて答えを出す「マイニング(採掘)」競争をする。その計算競争の勝利者は、その答えとともに、ビットコインによる送金データの塊をブロックとして承認し、参加者へ伝播する。こうした競争によって承認された取引であることを証明する仕組みをプルーフ・オブ・ワーク(PoW:Proof of Work)という。

(※2)マイニングビジネスに投資をしている人は世界各国におり、手がけている会社は多いが、10社程度がその大半を占めており、電気代が安いため、マイニング作業の多くは中国で行われている。

 承認された内容は、それぞれの端末に記録として保存されていく。こうした承認行為には、マイナーが正当な承認を行うと手数料を得られることで計算競争への参加意欲を持つと同時に、その競争下では不正を働くためのコストが膨大なものとなるという経済インセンティブを内包させることで不正も抑止している。ビットコインタイプのブロックチェーンは、この参加者間の競争的なチェックという革新的なメカニズムによって、悪意のある参加者が存在しうる環境下においても不正を許さない仮想通貨を生み出した。

 そして、承認されたすべての記録が、台帳として整合性を保った状態で存在し共有されている。整合性について最終的に合意する具体的な仕組みは以下の通りである。

 マイニング競争の勝利者が承認したブロックを受信した各端末ではこれを検証し、不整合がなければ承認されたものとして取り込む。ただし、不整合がある場合にはこれをはじく。まれに(複数のマイナーにより)答えがほぼ同時に見つかり、各端末が複数のブロックを受信することがある。

 こうした場合にはチェーンが分岐して、どちらも正しく承認された正当なチェーンといえる状況となってしまう。だが、ビットコインでは「最も長く連なったチェーンを正しいチェーンとみなす」というルールを決めてあるため、しばらく(※3)待てば、最長のチェーンが適正であると判断することができる。分岐が起きると、いわば二重支払いといえる状況になるが、結果として長いチェーンを採用すれば、一方の支払いのみを採用する判断が可能だ。

(※3)通常1承認あたり平均10分かかるが、確定するためには、確率的に6回の承認(6ブロック、約60分)以上待つことが求められている。

関連情報

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。