テクノロジーが創る未来社会

ラディカルな夢を形に 米MIT最前線 MITメディアラボ 石井裕副所長講演「未来協創:アート・デザイン・サイエンス・テクノロジー」

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 「未来を創るのは私たちの夢や創造力」。米マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボの石井裕副所長は、テクノロジーが人間にとって手段に過ぎないと強調する。AI(人工知能)に人類の未来を決めることは出来ない。宮沢賢治の詩から受けた衝撃、亡き人々への思い......。アートとサイエンスを融合する研究者の原点は、人間くさい感動と創造への希求だった。

妹を悼む宮沢賢治の筆跡が原点

 未来を創るのはテクノロジーではない。私たちの悲しみ、喜び、夢、そして想像力だ。大事なのはエンボディー(具現化する)なインタラクション(相互作用)。その象徴的な体験をお話ししたい。

 宮沢賢治が最愛の妹を失った悲しみを詠んだ「永訣の朝」。私はその原稿を岩手県の記念館で見た時の衝撃を覚えている。書いては消し書き直す。その軌跡の中にアートがある。万年筆の引っかく音、農作業で節くれ立った手......。原稿用紙から賢治の身体が浮かび上がってくる。美しい印刷で大量生産・標準化された本では体験できない。

 なのに、なぜアーティストは最終稿だけを美しい活字に変えて出版してしまうのか。こうした思いから「何を表現するか」「何が感動のベースか」という私の問いが始まった。

 そうして完成させた初期の作品の1つに「ミュージック・ボトル」がある。この香水入れのような小瓶は、フタを開けると音楽が流れる。朝起きて小瓶のフタを開ける。小鳥のさえずりが聞こえれば「晴れ」...といったように情報を伝える。

 私はこれを母に贈りたかったが、その前に亡くなってしまった。多くの同僚や盟友の死に遭ってきた。その1人、マーク・ワイザー(インターネット普及前にユビキタス・コンピューティングを提唱した米国の研究者)はこう語った。「真に発達したテクノロジーは生活環境と溶け合って区別がつかなくなる」。「ミュージック・ボトル」はそんな彼にささげた作品だ。

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