デジタル化で飛躍するASEAN

激戦のタイEC市場、「Gotcha!mall」が挑む

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 カプセルトイ(小型自動販売機)にコインを入れてガチャガチャっとレバーを回すと、中から小さな玩具が飛び出してくる。あの「ガチャ」ならではのギミックを使って、スマホから実店舗への来店と購買を促す「Gotcha!mall」が2018年5月末からタイでのサービスをスタートする。

屋台や市場での買い物へ誘導

 セントラル・グループや有名レストランチェーンなど小売大手はすでに参加を決定。本格稼働に向けての準備は着々整いつつある。

 タイの事業を推進するのは、「Gotcha!mall」を運営するグランドデザイン(東京・港)と資本・業務提携したトランスコスモス。ディレクターをつとめるのはグランドデザイン取締役の松尾俊哉氏。楽天タイやタイの電子書籍出版大手ウークビーのECサイトを経て、「Gotcha!mall」の舵取り役に就いた松尾氏は、タイのECの可能性と難しさに誰よりも触れてきた人物といえるかもしれない。

 「タイのECの事業体はどこも赤字。アリババが買収した最大手のLAZADAは1500億円、1100億円と相次いで投下し、タイに進出した中国のEC第2位のJDドットコムも500億円をつぎ込んだ。30年後を見据えてとにかくマーケットを抑えるために、キャンペーンを打っては安く売る商戦を続けています。体力勝負で、とても他国の企業は太刀打ちできません」

 松尾氏は中国企業の勢いを認める一方で、こうも語る。「長くタイのECの中に浸かって、この国はECだけでは難しいというジレンマを感じていたのも事実。タイは実店舗が強い。昼休みにOLが小さな屋台や市場でお店の人とやりとりをしながら楽しそうに服を買っている。これがオンラインに置き換わることはないでしょう。だからこそ実店舗への来店や購買につながる「Gotcha!mall」との親和性は高いと見ています」

 「Gotcha!mall」は、一見、スマホからクーポンを発行するだけの仕組みに見えて、その裏側ではAI(人工知能)を活用したアルゴリズムが機能している。ユーザーの位置情報、デモグラフィックデータ、いつどこでどれぐらいの頻度で利用し、どの店、どの商品が人気を得ているのかといったデータを詳細に分析した上で発行するクーポンは、ほかの誰とも違う、個々に最適化したクーポンだ。

 そのため、クーポンの転換率(店での利用率)は多い店では30%超。オンラインクーポンの転換率が通常1%未満であることを考えるとその効果の高さがよくわかる。クーポンの利用ついでに他の商品を買っていく客が多いことから、客単価も通常の1.5倍。来店頻度も高い店では2~3倍に達するという。

 「紙のチラシを新聞に折り込んだり、自社のアプリでクーポンを発行していても、検証されておらず、データが有効に活用されていない小売店がほとんど。それでいてやめてしまうことは怖くてできない。焼畑農業を続けているようなものです。でも、「Gotcha!mall」なら客の情報によってクーポンを出し分け、例えば最近来店頻度が落ちた客には良いクーポンを発行することもできる。顧客の囲い込みやロイヤリティアップに効果的なんです」(グランドデザイン代表取締役社長の小川和也氏)