デジタル化で飛躍するASEAN

東南ア市場開拓、スタートアップと連携を 日本総合研究所 調査部 上席主任研究員 岩崎薫里氏に聞く

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 東南アジアでデジタルイノベーションが爆発的に進んでいる。交通インフラが整っていない、銀行口座を持つ人が少ない――。先進国に比べ遅れたインフラ整備を逆手に取り、スマートフォンやタブレットを駆使したデジタルサービスが一足飛びに普及しているのだ。大きく変貌するASEAN(東南アジア諸国連合)デジタル市場の最前線を紹介していく。

 ASEANでデジタル技術を駆使したスタートアップ企業が台頭している。特に、eコマースやライドシェアといった消費・サービス分野での活躍が目覚ましい。一方、日本企業はこれまで東南アジアで高いブランド力を誇ってきたが、近年はやや存在感が薄れている。アジアのスタートアップ事情に詳しい日本総合研究所 調査部 上席主任研究員の岩崎薫里氏は、現地の新興企業との連携は日本企業の市場開拓を後押しすると指摘する。

東南ア発のイノベーションが勃興

――ASEANではデジタル関連のスタートアップが台頭しています。シリコンバレーや中国の新興勢力と比べ、どんな特徴がありますか。

 まず、スタートアップの多くが先進国で成功したビジネスモデルを取り入れている、いわゆる「タイムマシン経営」をベースにしているという特徴があります。典型的なのが、ドイツのロケット・インターネットがASEAN各国で立ち上げた企業群です。最も有名なラザダはEC(電子商取引)プラットフォームで米アマゾンがお手本ですし、衣料品ネット販売やタクシー配車サービス、レストランの食事のデリバリーなど、どこかで見たようなサービスがほとんどです。

 とはいえ、日米欧のビジネスモデルをそのまま持ち込んでいるわけではありません。いずれのスタートアップも現地の事情に合わせて大きく修正しています。ASEANのデジタル化そのものが、先進国とは大きく異なるからです。

――どんな風に異なるのでしょう。

 例えば、現金決済からクレジットカードを飛び越えてスマホ決済が主流になったり、スマホの普及率は1人1台以上でも家には洗濯機も冷蔵庫もなかったり、といった状況が起きています。デジタル化の急速な進展に、その他の分野が追い付いていないわけです。

 しかし、そこに商機が生まれます。「ペイン・ポイント(不都合)の解消」です。例えば、配車サービス大手のグラブはもともとマレーシアが発祥ですが、同国はバスや鉄道などの公共交通が未発達で、タクシーも料金不正が横行していました。そこで、メーターの付いたタクシーだけを配車し、GPS(全地球測位システム)で今どこを走っているか、スマホで家族に知らせるようにするなど、女性が夜1人でも乗れる安全性を目指しています。

 インドネシアの二輪タクシー配車大手のゴジェックは、渋滞の激しい首都ジャカルタで瞬く間に普及しました。現在はフード・デリバリーや宅配便のほか、自宅でネイルアートを施してくれる出張サービス、さらに運転手に現金を渡すとモバイル端末内のアプリに入金してくれる決済サービスまで手掛けています。日本のように公共交通機関やATM網が発達していないゆえに成り立つビジネスです。製品やサービスが独自に進化し、先進国のコピーでない新たな価値を提供する、まさに東南アジア発のイノベーションが勃興していると言えます。

――デジタル化で様々なビジネスが立ち上がる中で、日本企業のプレゼンスは相対的に下がってきているように見えます。

 その通りです。ASEANのブランド調査によると、多くの国ではアップルやグーグル、フェイスブックといった米IT大手が上位を占め、日本勢では一部の国でトヨタ、ホンダ、ソニーなどの名前が挙がるだけ。かつては強かった日用品や化粧品でも現地や韓国企業が力を付け、もはや日本製だから売れるという時代ではなくなっています。

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