IoTの勘所

IoTでなぜ製造現場の生産性が30%も上がるのか オムロン インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー 中島克起氏に聞く

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 時代の要請もあった。特に安全性が一層重要視される自動車関係の製品については、どのような環境・工程で1つ1つの製品を作ったのか、厳密なエビデンスが要求されるようになっていた。「装置同士をつながないと、製造時の状況をすべてエビデンスとして残すことはまず不可能です」(中島氏)

電子部品搭載装置と検査機器を連携して大きな成果

 もう少し具体的にオムロンが草津工場で実践しているIoTの導入例を見ていこう。SMTラインには、電子部品を基板に搭載するマウンターと呼ぶ装置がある。高速で電子部品を基板上に搭載する精密機械であるため、自身で内部の挙動を管理しているが、他の工程の別の装置とは連携していなかった。

 そのため、電子部品を搭載した基板製品が検査装置を通ったときに電子部品がずれていることがわかっても、マウンターにずれを修正するよう指示を自動的にフィードバックすることはできなかった。

 そこでオムロンは、検査装置とマウンターがそれぞれ独立して持つデータを連携させて見える化した。これまでは、現場の作業者が検査装置とマウンターのデータの関連性を丹念にたどって、ずれの原因をようやく究明できていた。それを装置同士の連携で自動的に行えるようにしたのである。

 「装置同士をつなぐことで、ひと目で状況がわかるようになりました。マウンターのメーカーは(当社が自ら製造して利用する)検査装置のデータが欲しいと思っていましたし、当社でも(他社が製造してオムロンが導入している)マウンターの情報が欲しいと思っていました。IoTというトレンドが生まれて、技術が熟成し、ようやくやりたいことができるようになったという思いです」(中島氏)

 草津工場のSMTラインでは、この装置同士の連携によって、マウンター内のどこで不良が起きているかまでを表示できるようにした。これまでは検査装置で「NG」となる基板製品が増えると、現場の人間がチェックして、マウンターの調整を行っていた。

 ところが、IoT化によって「マウンター内のある機能のパラメーター設定が、他とずれている」といったことが原因で検査でのNGが増えていることが自動的に判断・調整できるようになり、品質のばらつきを抑えることができるようになった。IoT化の成果として、草津工場では生産性を30%向上させることに成功したという。

IoTによる予兆検知で異常発生前に対策を実施

 検査装置が検出したデータと、製造装置のデータを短時間できめ細かく突き合わせることができるようになると、異常の「予知」も実現した。「基板に搭載する電子部品の位置ずれが大きくなってきている」「処理スピードが遅くなってきている」といったトレンドデータを基に、実際に異常が発生する前に対処できるようになったのだ。

 中島氏は「トレンドデータで徐々に変化していく状況を見える化することで、基板製品の品質に本格的な影響が及ぶ前に、製造装置の微調整をしたり装置の部品を交換したりすることが可能になりました。計画的に装置を止めてメンテンスしておけば、不意なトラブルでラインを止めることを減らせます」と語る。

 トレンドデータから、未来の異常発生を予測する技術は「予兆検知」と言われるが、オムロンではSMTラインでこの予兆検知の精緻化に向けた技術開発が続いている。すでに「現場では製造装置の特定の機能に関する警告が多発したとき、故障前にその機能の部品を交換する予知保全を実践しています。これにより不良品の製造率を統計的に推定した不良率の約100分の1に下げることができました」(中島氏)。

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