IoTの勘所

IoTでなぜ製造現場の生産性が30%も上がるのか オムロン インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー 中島克起氏に聞く

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 これらのキーワードに基づいた製造現場変革の概要を、中島氏はこう説明する。「オムロンが考えるのは、10メートルまでのものづくりの変革です。10メートルとは工場の高さであり、(工場の中にある)製造現場についてIoT化を推進することで、i-Automationを実現していきます。10メートルの製造現場を超える範囲にあるMES(製造実行システム)やERP(統合基幹業務システム)などは、自社の開発にこだわらず専門の各社に任せて連携するという考え方です」

 その製造現場で進めるオムロンのIoT化の考え方は、自社製造ラインを持つ自身が、IoT化で製造現場の生産性や品質を向上させるだけでなく、そこで作られるセンサーから検査機器までの幅広い機器によって、顧客の製造ラインに対してもIoT化による生産性や品質の向上を提供するというもの。

 いわば、自社の製造ラインがテストフィールドであり、ショールームであるという二重構造になっている。IoT化の効果を検証し、その成果を顧客へ展開するのである。

プリント基板の実装ラインで装置同士を連携させる

 オムロンの製造現場では、IoT化の取り組みを2014年から実施している。その1つが同社の草津工場(滋賀県草津市)でのプリント基板実装(SMT)ラインにおける取り組みだ。

 SMTラインでは、プリント基板という板に電子部品を載せてはんだ付けする。部品を載せたプリント基板製品は、家電から情報機器や産業機器、自動車などに至るまで、電子的な制御をする機器に組み込まれている。そうした中で、草津工場のSMTラインではコントローラー系の制御機器のプリント基板製品を製造している。

 SMTラインでは現在、少量多品種の製造に対応しなければならない。実際、草津工場のSMTラインは、1日に約500回もの装置の設定変更、いわゆる「段取り替え」が生じるという。極端な例では、製造する基板製品1つのために段取り替えを行うといった「1個流し」にも対応することがある。そうしたSMTラインの生産性向上と、製造する基板製品の品質の向上をIoTで加速しようという考えだ。

 SMTでは基板に様々な電子部品をはんだ付けしてから、光やX線による検査を行って、制御機器に組み込む基板製品を作る。SMTラインでははんだ付けや検査などの工程は自動化され、稼働データも取得していたが、各種装置のデータは連携して活用されていなかった。それを、草津工場のSMTラインでは、検査装置のデータと製造装置のデータを直接、装置同士で連携させるIoT化を行った。

 中島氏はこう語る。「一般に、検査は付加価値を生まないと考えられています。ミスを見つけるという視点です。しかし私たちは、違う視点を持ちました。検査には品質を担保する役割があり、検査を高度化することによって品質の安定化という付加価値が生み出せると考えたのです」

 SMTラインでは従来、検査装置から得たデータを、不良品を判別するためだけに使っていた。しかしオムロンは検査装置から得たデータをSMTラインの他の製造装置と連携させて見える化することで、SMTラインで製造する基板製品の品質を安定化させたのである。

 「従来は、検査装置が発した警告を見て、現場の作業者が現物の製造装置を確認し、人手で設定を調整する必要がありました。そうした中、検査装置と、SMTラインの各工程の装置がデータ連携できれば、異常が起きたときに問題を解決するための設定変更が自動化できるはずだと考えました」(中島氏)

 ただし一般に、製造ラインの大幅な変更は現場から受け入れられにくいことが多い。そのためオムロンでは「各工程の装置間を連携してデータを見える化することで品質保証がしっかりできる」ことを現場で説明し方向性の統一を図った。

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