人・組織がよみがえるマネジメント

「腹落ちしてない社員」は、すぐ変革を忘れる マネジメントソリューションズ 横江真由美 氏

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 指示や命令では社員のマインドセットは変わりません。マインドセットを変えるには、人の「感情」へのアプローチが必要です。その際の重要なキーワードは「なぜ?」なのです。人は何をしなければならないのか、どうやって実行すべきなのかを理解しても、腹落ちしていないと自発的な行動にはつながりません。よって、せっかく展開したはずのプロジェクトマネジメントプロセスが半年から1年後には、組織内ですっかり忘れ去られてしまうのです。

 その腹落ちを助けるためには、「なぜ、プロジェクトマネジメントプロセスに従って仕事をしなければならないのか?」を確実に、繰り返し伝えることが必要です。

 最近注目されているマーケティング・コンサルタントのサイモン・シネック氏も、優れたリーダーは「Why?(なぜ?)」を語って人を動かす、という点について脳の働きに即した見解を示しています。また(7)の同じ体験を通して共感するには対話が効果的ですから、「なぜやるか?」というテーマで社員の皆さんに対話を通して考えてもらう場の提供も効果的と考えます。

日々の行動を変え、「習慣」にまで高めるには?

 さらに、研修以外の日常的なコミュニケーションにおいても、変革の段階を「認知→理解→受容→習慣」というフェーズに分け、それぞれのフェーズに合わせたコミュニケーションを実施すべきです。これは脳科学的な考え方を採用したアプローチです。「人は認知しないものは理解しない、理解しないものは受け入れない、受け入れないものは日々の行動にしようとしない」のです。そして、一連のコミュニケーション活動のなかで、何度も何度も変革の目的や理由を繰り返すのです。

 「1度説明したので、これはもういいでしょう」と話す方もよくいらっしゃいますが、それはNGです。経営者が一生懸命メッセージを発信していても、それらは一般社員が受け取る全情報の数パーセントにしかなりません。だから、繰り返しメッセージを伝える必要があるのです。そして、社員のみなさんがどれだけ変革を受け入れようとしているか、必ずアンケートや対話を通して確認(測定)する必要があります。

 このように変革の実行時には、社員の状況を慎重にモニターしながら、社員のその時々の状況を鑑みた丁寧なコミュニケーションを繰り返し行っていくことが必要です。もちろん、社員一人ひとりに個別に対応するのは無理ですが、丁寧なコミュニケーション活動を続けていれば、社員は経営者の皆さんをより近くに感じ、共感し、動き始めるのです。なぜならそこには、擬似的ではあるけれど1対1のようなコミュニケーションが生まれるからです。つまり経営者の皆さんが発するメッセージが、社員一人ひとりにとっては「自分のために発信していてくれている」と感じるようになるのです。このようにして経営者やマネジメントの皆さんの真摯な態度が社員の「感情」を動かし始めるのです。

 最後に、経営者やマネジメントの皆さんには、社員の方々への「感謝の気持ち」を忘れてほしくないと思います。この気持ちが欠けていると、人の感情は動きません。ある経営者の方の社員に向けて発信する定期的なアナウンスメールには、「みなさんの日頃の努力に感謝いたします」と繰り返されていたことを思い出します。

横江 真由美(よこえ まゆみ)
株式会社マネジメントソリューションズ、マネジメントコンサルタント。グローバルIT関連企業に20数年勤務。プロセスエンジニアリング、ソフトウェアエンジニアリングに従事。後年はコーポレート部門CIO組織にて、グローバルプログラムやプロジェクトの日本側リーダーとして変革に携わる。グローバルの実践的な「チェンジマネジメント」に感銘を受け、日本国内で初めて適用し、後進の育成も行う。外資事業会社CIOオフィス勤務を経て2014年より現職。

キーワード:経営、企画、経理、経営層、人事、人材、営業、マーケティング、管理職、ものづくり

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