企業の人手不足感が強まるなか、優秀な人材をいかに育て、社内に引き留めるかが、一段と重要な経営課題になっている。その際に有効なのが、勤続年数や年代に応じた育成策や人事戦略だ。人事・組織改革で実績のあるクレイア・コンサルティングのコンサルタントが、世代別人事マネジメントの要諦を解説する。まず1回目は20代の若手社員をどう育てるか。
求人倍率の上昇が背景に
ある日突然、若手社員から退職の意思を告げられる。
それも、全く予想していなかった社員からである。
日頃の仕事ぶりに変わった様子もなく、不満を抱えている様子も見えなかった。
転職の理由をいろいろとたずねてみるが、結局のところ、何が本当の理由なのかよくわからない......。
最近、筆者が経営者から相談されるテーマの1つが、「若手社員の流出をどのように防ぐべきか」である。
景気回復を背景に求人数の増加が続いており、有効求人倍率は高い水準で推移している。20代後半(25~29歳)常用労働者の有効求人倍率は、底だった2009年の0.32倍から、2013年までに0.74倍に回復した(出所:総務省統計局)。
企業は今から約10年前(2005年頃)に、同じような人材流出・採用難に苦しんだ時期がある。この当時は、いわゆる成果主義人事制度の導入が一段落した頃でもあり、行き過ぎた成果主義の反省点として、若手を育てる意識が希薄化したこと、職場内のチームワーク・コミュニケーションが失われていることが指摘されるようになった。
人事施策を見直す中で、若年層の育成(研修)体系を充実させたり、キャリア開発を支援するための仕組みやキャリアパスを策定したりすることがブームになった時期でもある。人事制度に関しても、若年層は成果よりも能力の育成を重視する形で等級制度や評価の基準を見直したり、昇格にあまり差を付けない運用に戻したりした会社もあった。
企業が将来有望な若手社員を手放さないようにするためには、どのような観点が求められるだろうか。一言で言えば、今の会社に留まり続けることの「魅力度」を高めなければならない。4つの要素から魅力度の向上策を探ってみよう。