この時代を乗り切るワークスタイル改革

「残業ゼロ」の向こう側にあった本当の働きやすさ ランクアップ 代表取締役 岩崎裕美子 氏

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 また、ランクアップは45人の社員で、今期90億円の売り上げを見込んでいます。一般的に社員1人が1億円売り上げればよいと言われていますから、わたしたちは社員1人が他社の2倍を売り上げていることになります。効率が良いことは間違いありません。

好条件の職場のはずなのに、なぜお通夜みたいに暗い?

――ただ、定時退社を徹底し、業績もアップしていたにもかかわらず、当時は社員が会社に対して不満を持っていたそうですね。

 長時間労働をしていないのに、体調不良を訴える社員が続出しました。「社員がワクワクできる会社を」との思いで設立した会社の中が、毎日お通夜みたいに暗くなってしまったのです。

――なぜでしょう。

 社長である私が社員に「やりがい」を与えず、社員は会社に対して不信感を持っていたんです。業績は堅調に伸びていたので、「社員は自分の言うことを聞いていればよい」という姿勢だったのですね。労働条件は良いし、長時間残業を強いることもない。だから自分が正しいと信じていました。「条件は良いのに、どうして不満を持っているの? 不満を持つ社員のほうが悪い」と思っていました。

 しかし、2012年に一般社員を対象にした「社員の価値観を統一する」という研修で、社員が仕事に対してやりがいを感じていないことがわかったのです。「どんなに提案をしても社長は聞いてくれない。何をやっても認められないから、自分たちは会社に対して貢献したいと思わない」と言われました。つまり、社員の承認欲求がまったく満たされていなかったのです。

 これは外部の方に指摘されたのですが、社員にとって当時の会社は「別れたくても別れられない彼氏のような存在」だったようです。残業はない。オフィスは銀座にある。お給料も悪くない。だから辞めても同じ条件の会社は簡単に見つからないと。

 実際、離職率は低く、3年間だれも退職していません。足りないのは「やりがい」だけ。だから余計に会社の愚痴や不満を溜めやすかったんだと思います。私は、経営者として社員のやる気を引き出せなかったこと、経営側が社員の提案を認めなかったことを謝罪しました。

――労働環境だけを整えても社員は満足しなかったと...。研修後、会社をどのように変えていったのでしょうか。

 2012年の研修が会社を変えるきっかけの1つにはなりましたが、いちばん大きかったのは、全社員と会社の価値観を共有できたことだと思います。

 研修と前後して、外部の方に「社長は会社の価値観を決定しなければならない。社員はその価値観で会社を選ぶ」と指摘されました。これまで「会社の価値観を社員に伝える」ということをしたことがなかったんですね。だから私は「この会社は挑戦する会社である」と決め、これを社員全員に伝え続けました。そうするうちに会社が大きく変わり始めたんです。

 いちばんの変化は、経営側と一般社員との間に信頼関係が生まれたことです。「挑戦」という価値観を掲げ、社員と価値観を共有できたことで、権限委譲ができるようになりました。社員に権限譲渡し、やりがいを引き出したことで、売り上げは急激に伸びました。

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