この時代を乗り切るワークスタイル改革

「残業ゼロ」の向こう側にあった本当の働きやすさ ランクアップ 代表取締役 岩崎裕美子 氏

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――広告代理店から化粧品会社への転身というのは珍しい気がします。なぜ、化粧品会社を立ち上げようと考えたのでしょうか。

 超ブラック企業に勤めていた当時は、食事も睡眠も不規則な働き方をしていたので、肌がボロボロになり、実年齢より10歳も老けて見られていたんです。実際、私の周囲でも忙しく働く女性の多くは、肌の悩みを抱えていました。ですから「肌がきれいになる化粧品」をつくりたいと考えたのです。

 とはいえ、化粧品づくりのノウハウも、化粧品業界の人脈もありません。最初は化粧品の後ろに書いてある製造元に片っ端から電話をかけて、試作品を作ってくれるようにお願いしました。そうして生まれたのが、ランクアップの看板製品である「ホットクレンジングゲル」です。完成するまで1年近くかかりましたが、「美容液で洗顔する」というコンセプトが、多くの女性に受け入れられました。

――創立1年目のベンチャー企業では、すべての社員が寸暇を惜しんで働かないと会社が潰れてしまうというイメージがあります。

 ランクアップを立ち上げた時、何人子どもを産んでもキャリアを積める会社にすると決めたんです。以前勤めていた広告代理店では、創業7年で売上高20億円を達成しましたが、夜中まで働けない人材には居場所がありませんでした。どんなに優秀な人材でも、出産したら深夜残業はできませんから「お払い箱」になる。おかしいですよね。

 そうした考えは社員にも伝わっていましたから、ランクアップの創業から4年間は深夜残業をせず、全員が定時の18時から19時の間に退社するという働き方でした。

 しかし、これでも女性が一生働き続けることは困難だと気が付いたのです。きっかけは自分の出産でした。

 私たちのオフィスは銀座にあるのですが、19時の退社では保育園のお迎えに間に合いません。「ワーキングマザーは時短勤務にする」という選択肢もあるのですが、周囲が働いている中で「お先に失礼します」というのは、気が引けてしまいます。ですから、早退する社員が「申し訳ない」と感じなくてすむようにしたい、ワーキングマザーとそうでない社員との間に不公平感が生まれないようにしたいと考え、終業時間を17時30分に切り上げて定時退社を徹底しました。

――社員はとても喜んだのではないでしょうか。

 いえ、実は定時退社に最も反対したのは社員でした。「ホットクレンジングゲル」がヒットし、会社の業績も伸びていたので仕事はたくさんありました。定時退社を徹底しようとしたら、「仕事が終わらないので帰れません」との声が社員から上がってきたのです。

 しかし、これを受け入れてしまえば、なし崩し的に残業が増えてしまいます。今までと同じ分量の仕事をこなしつつ、全社員が定時退社できるようにするためには、業務自体を根本から見直さなくてはなりません。そう考えて、全社員に自分の仕事の内容を棚卸ししてもらいました。「どの仕事に」「どのくらいの時間を割き」「何に一番時間がかかっているのか」を洗い出して可視化し、「どうすれば、定時内で仕事が終わるか」を考えて、業務を効率化するためです。

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