この時代を乗り切るワークスタイル改革

「在宅勤務」は、いま必要な企業戦略 テレワークマネジメント代表取締役 田澤由利氏

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 労働力不足による企業競争力の低下が叫ばれて久しい。特に中堅・中小企業にとって、人材確保は経営の最重要課題となっている。2016年3月に東京商工会議所が公開した「中小企業の経営課題に関するアンケート結果」によると、売り上げを拡大するうえでの経営課題はダントツで「人材不足の解消」であり、約7割の企業がこの課題を挙げている。つまり、人を確保できなければ売り上げも増えない、という情勢になっている。

 この難題をどう解決すべきか。

 新卒の採用が難しいなら、出産・育児や介護で離職する人を減らしたり、呼び戻したりすればいい。ICT(情報通信技術)を活用し、場所や時間にとらわれないで働くテレワーク(在宅勤務)なら実現可能。さらに企業は固定費も削減できる――。そう提案するのは、『在宅勤務が会社を救う』の著者であり、テレワーク専門のコンサルティング会社「テレワークマネジメント」の代表取締役を務める田澤由利氏だ。

 テレワークは多様化するワークスタイルの1つとして注目されている。実際に導入しているのは大企業や外資系、ITベンチャーなど規模や業種が限られているのが実情だが、田澤氏は「中堅・中小企業こそテレワークを導入し、企業を"筋肉体質"にする必要があります。これまでのように『全社員が、決められた時間に、決められた場所に出社する』ことを強いる中堅・中小企業では次第に人材が離れていって、今後は存続が難しくなるでしょう」と指摘する。

――「在宅勤務が会社を救う」とは、どういうことでしょうか。

 テレワークの中でも雇用型・在宅型である「在宅勤務(テレワーク)」は、主に女性に対する「福利厚生」の位置づけでした。その背景には、長年続いた「日本の会社員の働き方」があります。多くの会社員は会社に出社し、フルタイム+残業するのが当たり前でした。従来の在宅勤務制度は、こうした働き方ができない社員のための救済措置だったのです。

 しかし、企業を取り巻く環境は急速に変化していて、これまでにない課題に直面しています。中でも喫緊の課題は、「少子化に伴う人材不足」です。

 日本の生産年齢人口は減少し続けています。給与水準の高い大企業には人が集まる一方、好待遇を提示できない中堅・中小企業で優秀な人材を確保することがより難しくなります。そうした状況の中、新卒で入社し、ようやく仕事を覚えた女性社員が出産・育児で退職することは、会社にとって大きな痛手となります。

 さらに今後の課題となるのが、「介護離職」する社員の増加です。まだ増えつつある段階なので、経営者も危機意識が高くありませんが、介護離職するのは40代~50代の会社の中核を担っている人材です。彼らが退職したら、同じスキルを持っている人材を確保するのは極めて困難です。

 そうした時代に企業が生き残るためには、これまで育成した質の高い社員の離職を防止しなければなりません。そのためには、女性が出産・育児を経ても働き続けられて、40代~50代の中核社員が介護離職しなくてすむ環境を整える必要があります。その解決策の1つがテレワークなのです。

在宅勤務にすれば固定費が数分の1に?

――著書の中で、テレワークは「福利厚生」ではなく「企業戦略」だと説いています。

 まず、オフィスを構えるコストを見直してみてください。オフィスの賃料や光熱費、設備投資、そして、それぞれの維持費など、一定のコストがかかります。さらに、従業員の交通費も必要です。郊外から都市部への通勤であれば、従業員1人当たり毎月2万円程度はかかるでしょう。

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