石川善樹の「脳とうまく付き合う法」

トレーニングは理詰め、レースは感性(後編) 東大卒のプロ自転車選手、西薗良太氏に聞く

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

 予防医学者の石川善樹氏がさまざまな分野のエキスパートと対談しながら、脳とうまく付き合う方法を探る連載シリーズ。今回は、自転車競技のプロ選手、西薗良太氏(ブリヂストン・アンカー・サイクリングチーム所属)との対談の後編をお届けします。前編では、東大工学部出身という経歴を生かした、データと直感の使い分け、情報の活用法など、勝つための極意を中心にお聞きしました。後編は引退を決意した経緯や、若いうちに人生を1度リセットする意味、これからの時代の働き方など、ビジネスパーソンにも関わるテーマを中心に議論しました。

若いうちに人生を1度リセットする

石川 復帰して3年間、輝かしい戦績も残されたわけですが、今回引退を決意したのはどういう理由だったんですか。

西薗 昨年、今年と全日本選手権を連覇しました。それでも、ヨーロッパのチームで走れるキップは取れないんですね。これ以上続けるよりも、そろそろ次のステージを考えるべきじゃないかと判断しました。

石川 なるほど。先ほどお聞きしたように、厳しい世界なんですね。それで次に何をするかは、まだ決めてないんですよね。

西薗 はい。固定せず、いろんな方に話を聞くことを今の自分のタスクにしています。

石川 それで為末さんとお会いしたわけですね。それにしても、うらやましいなあと思いますね。何をしてもいいわけですから(笑)。今おいくつでしたっけ。

西薗 ちょうど30歳です。

石川 私の先輩で選挙に2回出馬して2回とも落選した人がいます。選挙で落ちると、相当の借金を抱えるそうです。さらに、自分より先にスタッフの就職先を探さないといけません。それでも、その人は「石川君、楽しいよ、何やってもいいんだから」と本当にうれしそうに語っていました。40歳でしたけどね。

西薗 へえー、励まされるお話ですね(笑)。

石川 それを聞いて、自分も40歳で人生リセットして、何をやってもいい状態に身を置きたいなと考え始めました。そうでないと、一生しがらみの中で生きてしまうような気がするんです。東京にいるとしばられるので、複数の生活拠点を持つことも考えています。

西薗 私の場合、実は大学を卒業して大学院に進むつもりでした。でも1つのことを研究するのは向いてないなと思い、自転車の世界に転じました。いろいろ興味が多すぎるんですよ(笑)。だから、20代はサイクリングを口実に、いろんな分野の勉強をしていたとも言えますね。

石川 そうだったんですか。研究室はどこですか。

西薗 工学部の計数工学科の満渕(まぶち)邦彦教授の研究室です。Brain Machine Interfaceなどを研究されています。私は学部時代はコンピューター・アーキテクチャーや、不揮発性メモリーなどを研究していました。

石川 今のお話で思い出しましたが、パナソニックに大嶋光昭さんという技術者がいます。カメラの手ぶれ補正とかデジタル放送の根本技術などを考えた方で、なんと1100個以上の特許を持ち、会社に年5000億円の特許料収入をもたらしているそうです。

西薗 すごい! それだけで会社が何個もできますね(笑)。

石川 次から次へと新しい分野に飛び込んで、とんでもない発明を生み出す。僕もこういう人になりたいなと思うんですね。多分野で活躍できるシリアル・イノベーター。すでに歴史のある分野では勝負できないですから。

西薗 確かに、本を読めば読むほど、すごい天才がいて落ち込む時もありますね。

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。