石川善樹の「脳とうまく付き合う法」

旅を設計することは、人生を設計することである 訪日外国人向けツアーなどをてがける 佐々木文人氏に聞く

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創造性は移動の距離に比例する

石川 昔から言われている言葉で「クリエイティビティーは移動の距離に比例する」というのがあります。日本で言うと、明治維新の志士たちは全国を歩いて同士を募っていきました。歩いて、しゃべって、また歩いて、の繰り返しです。僕はしゃべっている間はあまり価値を生んでなくて、徒歩で移動している間に考えがまとまっていったのではないかと考えています。先ほどの商店街も、さっと歩けば20分もかからないところを、1時間以上かけて歩くところに意味があるんじゃないでしょうか。

佐々木 確かにそうですね。

石川 今までは定住することが前提で物事が考えられてきましたが、これからは移動が前提になるのではないか、パラダイムが大きくシフトしているんじゃないかと思います。会社でもシェアオフィスとか、テレワークとか、カフェなどで仕事をするサードプレイスなど、様々な場所で働くことが当たり前になってきました。

佐々木 仕事はネットでつながっていれば、どこでもできますね。僕の友人にも、キャラバン・オフィスと称して、けん引車に机やパソコン、電源などを積んで移動しながら働いている人がいますよ。

石川 机にかじり付いていても、いいアイデアは生まれないんですね。と言っても、カフェで仕事をすることが大事なんじゃない。オフィスとカフェを行き来することが大事であり、その途中で何かが出てくるんです。

佐々木 移動中に何か思い付くことはありますね。

石川 これはライフスタイル全般にも言えて、定住する必要性が低下しているんじゃないかと思います。定住時代の王様といえば、テレビです。僕は昔から、リビングルームに鎮座するテレビに対して、「あいつは何様だ、偉そうに」と思ってました(笑)。そのテレビが、今やパソコンやスマートフォンに取って代わられようとしている。今の若い人たちは、家にお金をかけることに意味があるのか、気付き始めていると思います。旅行に出掛ける人が増えているのも、住居費を使わなくなったからじゃないでしょうか。

佐々木 旅行については、バランスがすごく大事ですね。1年間旅してみて、ちょうどいいのは3カ月くらいの旅かなと思いました。長くなると、予定を埋めること自体が目的になる「こなす旅」になるような気がします。もう一つ、移動する楽しみと、行った先の楽しみがうまくバランスすると、充実した旅になると思いますね。

石川 旅を設計することは、人生を設計することである。会社にしばられ、家にしばられ、リビングルームにしばられる(笑)。そんな人生は不自然だと思いませんか。

佐々木 外国人のほうが自然のような気がします。いま盛んに議論されている「働き方改革」も、その観点から考えると何かヒントが見つかるかも知れませんね。

石川 歴史を振り返ると、19世紀は生活にかかるお金のうち、食費が多くを占めていました。そこで、食費をみんなでシェアする仕組みとして、英国で協同組合(coop)が生まれたわけです。20世紀には住居費の比重が高くなりました。21世紀は定住から移動へのシフトが進み、移動を前提とした新しいライフスタイルが生まれると思っています。その費用をどのようにみんなでシェアするか。文人君にはぜひ、協同組合に替わるような新しい仕組みを作り出してほしいですね。期待しています。

キーワード:経営、企画、経営層、管理職、プレーヤー、イノベーション、人事、人材、働き方改革

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