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M&Aは「マイナス」からのスタート マーサージャパン グローバルM&Aコンサルティング プリンシパル 関根賢二氏

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――買収価格はどのように決めるのでしょう。

 まず、売り手の企業が想定した事業計画に基づく価値がある。買い手側はこの価値が妥当かどうかを検証する(デューデリジェンス)。そこでは買収によって事業が切り出されることに伴うコスト(スタンドアロン・コスト)などを差し引く。そのうえで買い手が期待するシナジー分をどれだけ上乗せするかによって買収価格が決まる(図表1)。

図表1 買収金額の考え方

・買収価格はシナジーを織り込んで決定されている(買収した時点で「マイナス」から始まっている)

・買収価格はシナジーを織り込んで決定されている(買収した時点で「マイナス」から始まっている)

・シナジーをどこまで実現できるかで買収価格の妥当性(M&Aの成功)が決定される

 ――買収価格は対象会社のみでは決定されない(買い手とのシナジーを織り込んで決まる(一物二価である))

 ――買収時点では買収価格の妥当性は検証できない(PMIでシナジーを実現できるかがカギ)

 ここで大事なのは、買収価格は買われる側の企業だけでは決まらないということだ。買い手がどんな企業か、どんな戦略を打つかによってシナジーは変わる。だから一物二価、三価になる。もう1つは買収時点では価格が妥当かどうか判断できない点だ。買収後の事業戦略(PMI=Post Merger Integration)によって価値を生み出せるかどうかが問われる。

あいまいで済ませる日本企業

――シナジーを生み出すには事業戦略が大事ということですが、戦略を策定する際のポイントは。

 シナジーには大きく分けて、収益を伸ばす効果と、コストを下げる効果の2つがある。家計と同様に、企業も収益(給料)を伸ばすのは難しいが、コストを下げる(節約)のは比較的やさしい。事業を統合することで、重複する分野の人材を減らせるほか、規模が大きくなれば仕入れ値も下がる。両社が知恵を持ち寄り、ベストプラクティスを採用する効果もある。

 一方、収益を増やすには両社がそれぞれ持つ顧客や商品をもとに、新たな市場を開拓したり、新製品を開発したりするといった方法がある。大事なのは、コスト削減でも収益拡大でも、要因をきちんと分解することだ。価値を30%増やすとすれば、何によって何パーセント分を生み出すか、誰が責任を持つのか、明確にする必要がある。その上で、経営陣の目標と報酬を定め、さらに一般従業員の賃金にも成果が反映される仕組みを作る。アメとムチでシナジー達成への道筋をつけるわけだ。

 ところが、日本企業は事業戦略をきちんと詰めず、オブラートに包んだような形で済ませてしまうことが多い。言語の問題もあるかもしれないが、より大きいのは海外企業をきちんとマネジメントできる人材が少ないことだ。経営する自信がないので、買った企業の経営陣をそのまま残し、運営も大きく変えようとしない。

 本来なら、買い手は売り手に対し、なぜ高い価格で買うかを説明し、その価値を生み出すにはこういう戦略が必要だと、腹を割って話し合うべきだ。こうした当たり前のことができていない場合が多い。高い価格で買うということは、マイナスからのスタートだという認識が足りないのではないか。

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