グローバル競争を勝ち抜く組織・人事

売り手優位のM&A市場、人材戦略がカギ 米マーサー シニア・パートナー、グローバルM&Aトランザクションサービスリーダー ジェフ・コックス氏

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――経済のグローバル化が格差の拡大を招いているという議論が盛んです。企業の成長と個人の幸福を両立させるには何が必要でしょう。

人材を生かすことで価値を最大化

 非常に重要な問題だと認識しています。これまでM&Aを実施する企業がきちんと考慮してこなかった問題点として、コミュニケーションと変革マネジメントの2つが挙げられると思います。M&Aのうち、6~7割は想定通りの効果を上げていないという調査結果もありますが、その大きな要因はこの2つだと言ってよいでしょう。

 具体的には、現場の従業員からトップマネジメントに至るまで、どう行動を変えていくか、どう責任を定義し直す必要があるか、十分に浸透していないように感じます。ざっくり言うと、企業の総コストのうち、人件費が40%程度を占めます。この大きなコストをマネジメント層がきちんと管理しなければ、M&Aから得られる価値を最大化することはできません。

 買収後に従業員のワークライフバランスをどう実現するかも重要です。組織がどこに向かおうとしているのか、そのために自分は何をなすべきか、役割をはっきりと示すことで、初めてそれが実現します。組織のリーダーはこうした点を理解し、事業がうまくいくかどうかは人にかかっていると認識する必要があります。

――日本企業が海外企業を買収する際に気をつけるべき点はどんなことでしょうか。

 M&Aにおいて人事関連の要素が最も重要であることは、日本企業にこそ当てはまるでしょう。日本企業が国境をまたぐ買収を実施する場合、現地の経営チームを核にして事業を始めるのが定石です。そのためには、トップマネジメントの引き留め策や、シナジー効果を生み出すための変革マネジメントやコミュニケーションが特に重要になるからです。

 特に最近は、海外企業の事業の一部を切り出して日本企業が買収する「カーブアウト」と呼ぶ形態が増えています。この場合、現地の従業員は今までと全く違った給与体系、システム、運用体制に移行することになります。

 日本人は規律正しく、忍耐強いですが、M&Aにあたっては、スピードを求められる局面もあります。米国人が典型的ですが、海外では買収による効果をすぐに出すことが期待されがちです。日本流のゆったりしたペースで進めると、従業員が変革を実感しにくく、変化が起きないのではないかと思うようになる懸念もあります。

――最近は、日本企業が事業を切り出して売却するケースも増えています。

 世界経済の不確実性が高まるなか、海外の投資ファンドなどにとって、安定収益が見込める日本企業への投資に対する関心が高まっています。海外の事業会社やファンドなどに事業を売却する場合、売却価値をどう高めるか、従業員をスムーズに移籍させるにはどうすればよいか、といった出口(Exit)戦略が重要になります。

特に日本企業の場合、終身雇用や年功序列といった慣習があり、従業員の処遇がM&Aを成功させるための大きな課題と言えます。多くの経営者の方が、人材関連の課題の重要性を認識し始めていると実感しています。私たちがお手伝いできることも多いと思います。

キーワード:経営、企画、経理、経営層、管理職、人事、人材、グローバル化、研修、AI、働き方改革

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