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売り手優位のM&A市場、人材戦略がカギ 米マーサー シニア・パートナー、グローバルM&Aトランザクションサービスリーダー ジェフ・コックス氏

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 特徴として言えるのは、豊富な資金を背景に、企業がこれまで手掛けていない産業分野や地域に積極的に進出しようとしていることです。ところが、先ほど言ったように、売り手は有利な立場にあることから、35%の企業が情報提供に否定的であるという調査結果が出ています。これは、買い手が限られた情報による仮定をもとに、買収の検討を進めなければならないことを示しています。

64%の企業が「人材が最も重要」と回答

 この結果、クロージングの遅れが目立つようになってきました。買い手は必要な情報が得られないために、買収後の給与支払いや売掛金管理といった各種業務やプロセスを立ち上げるのに時間がかかっているのです。買い手側に主導権がある場合は、売り手が積極的に情報提供するため、こうした現象は起きませんでした。

――買い手企業はどう対応すればよいのでしょう。

 重要なのは、限られた情報の中で、買収企業の資産価値を適正に評価するデューデリジェンスをいかに進めるか、そして、買収した企業の価値をいかに高めるか、ということです。今回の調査によると、64%の企業がデューデリジェンスで最も重要な要因は「人材である」と答えています。具体的には(1)リーダーシップ、(2)核となる人材の引き留め、(3)企業文化や組織の同質性、の3つが特に重要とされています。

 ところが、こうした認識にもかかわらず、外部の専門的なアドバイザーを使って買収先企業の人材アセスメントを実施している企業の割合は15%にすぎません。買収にあたって非常に重要な分野に資金が振り向けられていないのです(下図参照)。

買収先企業の人材アセスメントの実施状況

注:外部アドバイザーと社内独自の調査を両方実施している企業もある。 出所:マーサー「M&Aにおける人事リスク調査レポート(2016)」

注:外部アドバイザーと社内独自の調査を両方実施している企業もある。

出所:マーサー「M&Aにおける人事リスク調査レポート(2016)」

 具体的にM&Aで付加価値を生み出すために投資すべき人材関連分野は下記のように整理できます。

<買収側にとって必要な施策>

(1)経営陣と主要従業員の能力を評価する
(2)効果的な人材引き留め策を作成する
(3)明確な文化、コミュニケーション、変革プランを持つ
(4)人事サービスのあり方を見直し、従業員のニーズを把握する
(5)経験豊富なアドバイザー等の協力を得て移行プロセスのスピードを上げ、より効率的に進める
(6)企業の視点やグローバルな視点を取り入れ、福利厚生を効率的に管理する
(7)報酬に関する市場競争力を理解し、すべての報酬プログラムを活用して適切な人材を引き留める

<売却側にとって必要な施策>

(1)重要な従業員グループを特定し、引き留めプログラムを検討する
(2)経験豊富な売却側アドバイザーと企業の分離、分割のスペシャリストを活用する
(3)説得力のある、適切な価格での移行サービス契約の提供に努める
(4)人材の管理、配置計画を明確に文書化する

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