グローバル競争を勝ち抜く組織・人事

売り手優位のM&A市場、人材戦略がカギ 米マーサー シニア・パートナー、グローバルM&Aトランザクションサービスリーダー ジェフ・コックス氏

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 人事・組織コンサルティング世界大手の米マーサーはこのほど、「M&A(買収・合併)における人事リスク調査レポート」をまとめた。国境をまたぐクロスボーダーM&Aが急増するなか、人事や組織にかかわるリスクが高まっている現状が浮き彫りになった。企業はどう対処すべきか。同社のグローバルM&Aトランザクション・サービス・リーダーであるジェフ・コックス氏に聞いた。

少ない情報で短期間に判断求められる

――まずM&Aに関する最近の世界的な流れを教えてください。

ジェフ・コックス Jeff Cox 米マーサー シニア・パートナー、グローバルM&Aトランザクションサービスリーダー。

ジェフ・コックス Jeff Cox

米マーサー シニア・パートナー、グローバルM&Aトランザクションサービスリーダー。

通算25年以上、500件超のM&A経験を有し、数々の大手多国籍企業の案件に携わる。事業会社やプライベート・エクイティ(売り手・買い手)のグローバルビジネス戦略、特に人材戦略、報酬、生産性向上等におけるアドバイザリー業務に従事。M&A関連の講演や執筆多数、マーサーが2016年に発行した「M&Aにおける人事リスク調査レポート」の共著者でもある。事業会社を経て1998年にマーサー入社。M&Aアドバイザリー専門部署のグローバル責任者を務める。

 調査機関のまとめによると、2015年の世界全体のM&Aは公表ベースで約5兆ドルと過去最大規模でした。米国企業を中心に手元資金が豊富であるほか、銀行による融資条件も緩やかだったことなどが要因です。

 ただ、公表後に中止となった案件もあります。件数では900以上、金額では7800億ドル相当がキャンセルされたようです。この中には米企業による2件の大型案件も含まれます。要因としては、政治的な環境、独禁法上の問題、そして製薬大手ファイザーの案件のように、米国の税制変更による影響もあります。

――2016年に入ってからはどうでしょう。

 1~3月はスロースタートでしたが、4~6月は上向きになってきました。ただ、昨年に比べると世界経済の不確実性が高まっており、ビジネス環境は不安定な要素が増えています。英国の欧州連合(EU)離脱もその1つです。しかし、つい最近もソフトバンクが英半導体設計会社アーム・ホールディングスを3.3兆円で買収すると発表したように、企業が豊富な資金をどう活用していくか、真剣に検討していることに変わりはありません。

――M&Aに伴う人事・組織戦略について最近の動向と課題は。

 私たちの顧客や、一緒に仕事をする投資銀行等のファイナンシャルアドバイサーと話していると、M&Aの成否を分ける要因は人材であるという認識が一層高まっていると感じます。背景には、M&A市場における売り手と買い手の立場が逆転したことがあるとみています。

 2~3年前までは買い手が有利でしたが、世界的な金融緩和によるカネ余り状況の中で、現在は売り手市場の様相が強まっています。売り手は積極的に情報提供する必要をあまり感じておらず、買い手は少ない情報で、短期間のうちに判断する必要に迫られます。買収で競合する企業も多く、買収費用も上昇しがちです。リスクとコストが高まる状況で、買い手企業は人材をいかに活用して買収効果を高めるかを考えざるを得なくなっているわけです。

――先ごろマーサーがまとめた調査結果も、そうした傾向を示していますね。

 マーサーの「M&Aにおける人事リスク調査レポート」は3つの異なるデータで構成しています。(1)M&A専門家323人からのアンケート回答、(2)企業およびプライベートエクイティの顧客、投資銀行家など78人への聞き取り、(3)マーサーが2015年に手掛けたM&Aのうち約450件の分析、です。

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