石川善樹の「脳とうまく付き合う法」

人間の限界はどこまで広げられるか 世界選手権で2度の銅メダル・為末大氏に聞く

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石川 最後に、引退後のお話を少し。ビジネスパーソンは50歳くらいで第2の人生を考え始めると思うんですが、アスリートの世界は早いですよね。でも高齢化で一般の人もファーストキャリア、セカンドキャリアをそれぞれ20年、30年ずつ生きる時代になってきて、スポーツ選手の生き方って参考になるのではと思うんです。為末さんは引退後に会社を設立したり、本を何冊も出されたり、幅広く活躍されていますが、どんな思いで活動しているんですか。

「なかったことにできない」苦しみ

為末 現役の時からずっと変わらないのは「心と体」への関心です。突き詰めると人間とは何かっていうことに行き着く。振り返ると、選手時代に自分が思い悩んだ問題について納得しようとしているプロセスかもしれません。いま考えると、なぜあんなに悩んでいたのか、20年もよく夢中になったなと思いますけど。

石川 それだけ思い込む力がないと、できないことですよね。ある人材関連会社の人に聞いた話ですが、第2の人生に移るのに、60歳とか65歳の定年まで会社にいる人は、自分とは何か、何がしたいのか考えずに過ごすことが多く、次のキャリアを見つけにくい。一方、50歳くらいでスパーンと割り切って次の世界に移った人の方が生き生きしているそうです。今までのキャリアをリセットして、どう自分を生かすか、難しいですね。

為末 スポーツの世界では、トップまで上り詰めた選手ほど、自分が力を注いできた対象や、存在感を発揮できるものがなくなる喪失感は大きい。それと、逆説的ですが「なかったことにできない」ことの苦しみもあります。現役時代の記憶がなければ、うまくやれるのに、みたいな。プライドが捨てられないと言ってしまえば、それまでですが。

石川 最近出版された「逃げる自由 諦める力2」(プレジデント社)の中に「『ある』ことを当たり前だと思うか『ない』ことを当たり前に思うか」という文章がありますね。もともと「ない」と考えれば、1つでも「ある」ことがありがたいと感謝の気持ちで過ごせますよね。

為末 ベースはネガティブから入ると、人生はポジティブになる。引退したわけじゃないけど、フィギュアスケートの浅田真央選手が長期休養から復帰して、ソチオリンピックで6位に入賞しましたね。ショートプログラムでは大きなミスをしたけど、フリーでは素晴らしい演技で誰よりも大きな拍手と歓声を浴びました。24時間で人はあれだけ変われる、レジリエンス(復元力)のすごさ。リオ五輪ではそんな選手のパフォーマンスも見てほしいですね。

キーワード:経営、企画、経営層、管理職、プレーヤー、イノベーション、人事、人材、働き方改革

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