グローバル競争を勝ち抜く組織・人事

AIと共に生きる、目を背けず自ら変化起こせ 米マーサー 社長兼CEO フリオ・ポルタラティン氏

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 4つ目は、データを求める傾向が強まっていることです。社員と経営陣の良好な関係を保つためには、データに基づく洞察や意思決定が以前にも増して重要になっているからです。例えば、若い人ほど、業績評価においてデータを重視してほしいという要望は強いですし、最近はゲーム的な要素を取り入れた評価方式も普及しつつあります。多くの会社にとっては、20歳代から60歳代まで5つの年代の社員が存在するのは初めての経験です。福利厚生ひとつ取っても、データを通じて年代ごとの満足度を把握しなければ設計できなくなっているのです。

未来の仕事の65%はまだ存在しない

――そうした変化に加え、AIやロボティクスといったデジタル技術の革新も急ピッチで進んでいます。AIやロボットがヒトの仕事を奪いかねないという脅威論がある一方、高齢化による労働力人口の減少を補うプラス面も指摘されますが、どのようにお考えですか。

 まず、AIやロボティクスは備えるべき対象ではなく、すでに存在しているということを強調したいと思います。多くの企業はすでに生産活動や組織管理のツールとして活用し始めています。私たちは大きな変化のど真ん中にいるのであり、すばらしい時代を生きていると私は思っています。自動化により、人々はより健康で、長寿を謳歌できるようになりました。

 多くの人は、意識しないまま、自然に「破壊的革新(ディスラプティブ・イノベーション)」を受け入れているとも言えます。例えば、米国のディズニー・ワールドに行くと、「マジックバンド」と呼ぶ腕輪を渡され、その腕輪がどこに行ったか、何を買ったか、行動をすべて記録してくれます。また、そろそろ食事にしませんか、と提案してくれたり、待ち時間の少ないアトラクションを教えてくれたりもします。デジタル技術のおかげで、より充実した時間を楽しめるようになったのです。ビジネスの分野でも、メールを作成するAIが登場しています。あたかも、本人が作成しているかのように自動で返信してくれれば、仕事の効率は格段に上がるでしょう。

――マイナス面についてはどうでしょう。

 革新的な技術が導入されると、仕事によってはなくなるものもあるでしょう。しかし、代わりに生まれる仕事もあります。これから大事なことは、働くことに影響を与える変化を能動的に捉えること、そして、それに備えることです。あなたが新入社員であろうと、ベテラン社員であろうと、自動化やAIの変化は必ず訪れることになりますから。

 多くの人が変化を脅威と感じるかもしれませんが、私たちは全く違う見方をしています。1つ、面白いデータを紹介しましょう。「ダボス会議」を運営する世界経済フォーラム(WEF)とマーサーが共同研究した結果によると、今の子どもたちが将来に就く仕事のうち、65%はまだこの世に存在していないそうです。問題はテクノロジーの進化によってどの仕事がなくなるか、ではなく、将来に必要となるスキルはどういうものになるか、なのです。それこそが適切な設問だと私たちは考えます。

 すでに今日でも、何百万という仕事が、そのスキルを持つ人材が足りないために、満たされない状態にあります。企業にとって具体的に必要なことは、従業員に将来必要となる仕事のスキルを身に付けさせること。今のスキルを見直し、改善するための訓練です。これから来る変化を柔軟に受け入れる企業は、他社よりも成長の可能性が高まるでしょう。

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