グローバル競争を勝ち抜く組織・人事

アローラ氏「巨額報酬」は他人事じゃない マーサージャパン 井上康晴氏、野村有司氏

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

人材獲得競争が熾烈に

――欧米企業と日本企業では報酬のあり方にどんな違いがありますか。

野村 中長期的なインセンティブ、つまりストックオプションなどの株式報酬が少ないことが最大の違いだ。日本では税制の制約などがあり、欧米流のインセンティブを導入しづらい。日本企業は「1円ストックオプション」(※1)や「自社株信託スキーム」(※2)など、固有の手法を編み出して活用しているのが実情だ。海外法人などの役員に対して、日本本社の株式を付与するストックオプションを実施するのも、手続きやコスト面で実施が難しい。

(※1)役員などが将来に一定の価格で株式を取得する権利を得て、株価に連動した報酬を受け取るのがストックオプション制度。株式取得の権利を行使できる価格によっては、株価の値下がりで利益を得られない場合もあるが、権利行使価格を1円に設定すれば、会社破綻など例外的な場合を除き、役員が何らかの報酬を得られる。このため、退職慰労金の代替として導入する企業が目立つ。

(※2)信託の仕組みを使い、会社の業績や業務の成果に応じた現物株を役員の退職時などに渡す制度。企業が決めた条件に応じて信託銀行が株を取得し、役員に株式を渡す。企業は役職や業績に応じたポイントを役員に与え、在職時や退職後にポイント数に応じた株式と交換する。在職時に株式を交付する場合も退職後まで売却できないケースが一般的で、業績向上の動機づけとなる。

井上 日本の大半の企業では役員になると昇給しないが、欧米企業では昇給は当たり前という違いもある。日本企業の経営陣は同じ役位の場合、1年目でもベテランでも報酬の基本部分はほぼ一緒。変わるのは賞与部分だけで、しかも欧米に比べれば変動幅は小さい。欧米では引き抜きが盛んなため、基本部分も上げざるを得ない。Pay for performanceのみならず、Pay for Retentionが重要となっている。欧米に比べ、日本は競争原理が働きにくいことも、報酬が低くとどまる要因になっている。

野村 報酬に対する考え方の違いも大きい。日本でも2010年から役員報酬を開示する義務が課されたが、取引先から「ずい分もらってますねえ。値段もまけてもらえませんか」と嫌みを言われたという話もよく聞く。こんな風土があるから、多くの企業の役員は自分からは「報酬を上げたい」とは言いづらい。独立社外取締役など外部から「上げないと競争に勝てない」と背中を押してあげる必要がある。最近は「自分が十分もらわないと会社がグローバル化していかない」と話す経営者も出てきた。

――確かに、日本人には「おカネだけが働く目的じゃない」といったマインドが強いですね。

野村 国内だけで事業が完結する時代なら、それでもよかった。海外展開するにしても、これまでは現地法人のトップを日本人が務めても支障がない場合が多かった。しかし、海外事業の比率がますます高まる中、世界中から人材を集めないと競争に勝てない、と考える企業が増えてきた。

 グローバル化が進む企業では、逆の心配も起きている。現地法人の日本人トップが、現地の企業に取られてしまうリスクだ。今までの報酬制度や水準では、いくら優秀な人材を派遣したり、育てたりしても引き留められず、グローバル人材の育成が追いつかないリスクが高い。

 もちろん、日本人中心の経営で、成功している企業もある。低い報酬で高い企業価値を上げ、非常にコストパフォーマンスがよいということになる。トヨタ自動車の豊田章男社長はよく「私は世界一、コストパフォーマンスのいい社長だ」と話している。報酬を上げれば人が集まるのか、という議論もある。

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。