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ケース36:痴漢で逮捕は「退職金なしで懲戒解雇」? 弁護士・ニューヨーク州弁護士 畑中 鉄丸 氏

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今回の悩める経営者:株主会社カソリーヌ 代表取締役社長 山岡やまおかしおり   (43歳)

相談内容

逮捕された従業員を解雇できるか

 設例のとおり、「従業員が犯罪を犯して逮捕されたら、そんな困ったヤツは即解雇で放り出せばいい。そんなの常識的に考えて当たり前でしょ」と考えておられる経営者の方もいらっしゃるかと思いますが、実はそんなにあっさり従業員を強制的に辞めさせるわけにはいきません。

 無論、世間一般には、犯罪を犯して警察に逮捕されたような場合は、こっそり会社を去る、というケースも多いように見受けます。

 しかしながら、そんなケースばかりではなく、「犯罪は犯罪。そりゃ、悪いことをした。でも社員としては優秀だし、まだまだ働けるし、定年まで勤めたい」と言い張って来られた場合、この社員を、本人の意に反して、解雇したりできるか、というと、事はそう簡単には運びません。

 本人から自主的に辞めてくれるなら格別、本人の意思に反して、無理やり会社から追い出す解雇、その他の不利益処分を行うためにはかなり高いハードルがあり、乗り越えるには一苦労するのです。

 また本人が犯罪を犯したことを認め、自白して反省しているならともかく、今回のように「オレはやっていない! 裁判を戦う」と無罪を主張している人間に対して、「臭いものには蓋」とばかりにいきなり解雇するのは、無罪推定原則にも反し人権上も問題になります。

 このような観点から「痴漢をした疑惑があって捕まっても、疑惑は疑惑にすぎない。認めたわけではないし事実ではない。自白があっても、強要されたもので冤罪だ。私は戦う。解雇? オレは定年まで勤めるぞ。年休をとるし、長引くようであれば、その後は欠勤扱いでもかまわない。出てきたら、またよろしく」という細田氏と江良野弁護士の言い方は、一つも間違っていません。

起訴休職

 とはいえ、仮に細田氏が保釈で出てこられたとしても、若い女性向けの情報サイトを経営する会社に「無罪推定が及ぶとはいえ、被疑者、被告人の立場」である従業員が復帰して、何食わぬ顔で「肉食系女子特集!」とかシレっと編集されても困ってしまいます。また保釈されずに勾留が長引き、年休消化のあと欠勤、というようなグレーな扱いも、会社の姿勢を問われかねません。

 そこで、起訴休職制度というものが就業規則上定められています。「従業員が何かの刑事事件で起訴・拘留され刑が確定されるまで休職扱いとする」というものです。

 「普通の休職扱いと何が違うの?」という疑問の声が聞こえてきそうですが、本来的な休職制度は、従業員が勤務とは何の関係もない日常生活での傷病のため会社で働けないケースで、会社が一定期間の休職を命じ解雇を猶予するというのが趣旨ですから、両者は全く異なります。

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