経営トップのための"法律オンチ"脱却講座

ケース33:海外進出!それ意味あるの? 弁護士・ニューヨーク州弁護士 畑中 鉄丸 氏

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

今回の経営者・室津社長への処方箋

 私も、室津社長の海外進出を応援したいですし、うまくいってほしいとは思っています。

 とはいえ、あまり準備もせず、楽観的な情勢判断と現地パートナーへの信頼だけを頼りに課題やリスクを検討せず、莫大な資源投入を先行して行う、というのは、失敗する典型例のような気がします。

 進出先のパートナーが、それほど御社製品を「売れる」「イケる」「あたる」と太鼓判を押すなら、何も御社自ら乗り込む必要はないわけで、「売ってやるから、日本円をもって、我が国まで、我が社製品を取りに来い。港で受け渡しだ。あとは、そっちで、がんばって売れ」というスタンスでもいいわけです。

 その上で、あまりにヒットして、機会損失が大きいと判断された場合、すなわち「日本で作った原価の高い商品に運賃を上乗せして、他人に任せて売る」より、「自分たちで現地生産して、その儲けを分捕った方が、より大きく儲かることがもはや確実である」と判断されてから、現地へ本格進出することを考えてもいいのではないですか?

 これだけ、情報と流通が発達した現代では、どんなにユニークで、際立った特異性や先端性がある商品でも、時間差・空間差・認識差などすぐ埋められてしまいます。「すべての商品は、またたくまにコモディティー化する」という命題すら成り立つのが、商売の世界の常識です。長い準備時間をかけて多額の出資をして、いよいよ販売開始となったときには、陳腐化していて、だれも見向きもしない、なんてことはいたるところで起きています。

 とくに先行して、お金や商品を含めた貴重な資源が大量に動員されており、その担保となっているのは、「つい最近意気投合した、現地パートナーとの厚い友情と信頼」だけというのも気になります。加えて、弁護士や会計士が全部現地パートナーの手配によるということですが、むしろ不安と心配を増やしている要素としか思えません、当然ながら契約、事業の仕組みからリスクや財政負担まで、御社の一方的な犠牲の下、現地パートナーの利益が最優先されている可能性があります。

 あらためて、現在何が起こっていて、御社が危険な状況にいるのか検証することから始めた方がいいと思います。

畑中 鉄丸(はたなか てつまる)
弁護士・ニューヨーク州弁護士。東京大学法学部在学中に司法試験(日本)及び国家公務員試験1種に各合格。新日本製鉄勤務等を経て、弁護士登録し、1998年に渡米。ペンシルバニア大ロースクール(修士課程)留学、ニューヨーク州司法試験合格後、Kirkland&Ellis法律事務所勤務等を経て、弁護士法人畑中鐵丸法律事務所を設立し、現在に至る。多数の企業・医療機関・学校法人等の顧問弁護士を務めるほか、日本弁護士連合会債権回収に関する委員会(サービサー委員会)前委員長、日本商品先物取引協会あっせん・調停委員、日本商品先物取引協会・自主規制委員会委員、一般社団法人ニューメディアリスク協会理事、子ども安全学会理事長等を歴任。著書は「企業法務バイブル」シリーズ(弘文堂)、「戦略的コンプライアンス経営」(弘文堂)、「ビジネス契約実務大全」(企業研究会、分担執筆)、「法律オンチが会社を滅ぼす」(東洋経済新報社)、「こんな法務じゃ会社がつぶれる」「生兵法務は大怪我のもと!」(第一法規)、「ヤヴァイ会社の死亡フラグ10」(経世出版)等多数。最新刊は「こんな法務じゃ会社があぶない」(2016年4月、第一法規)。

キーワード:経営、マーケティング、グローバル化、働き方改革、人材、イノベーション、経営層

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。