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ケース33:海外進出!それ意味あるの? 弁護士・ニューヨーク州弁護士 畑中 鉄丸 氏

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あいまいな目的、海外進出への幻想

 私はそう思いません。「経営者が多大な時間とコストとエネルギーを注ぎ込んで中国に進出したあげく、数年後にさらに多大な時間とコストとエネルギーを費消して撤退する、という失策を犯す」のは、単に「経営判断が誤っていたから」ということに尽きると思います。別の言い方をすれば、中国進出する中堅・中小企業の経営者は、「目的が未整理で、頭脳が混乱した状態」で経営判断しているから、ということだと考えられます。営利追求をメーンミッションとする組織である企業の目的設定・経営判断の方向性としては、

1)カネを増やす

2)出て行くカネを減らす

3)時間を節約する

4)手間・労力を節約する

のいずれかに収斂(しゅうれん)するはずです。とはいえ、現実的には、「企業の目的設定・経営判断」として、

5)(経済的には意味がなくとも)イイカッコをする、世間体や体面を保つ、「すごいですね」「国際企業ですね」とか言われてプライドを充足する、意地を張る、見栄を張る

という「経済的には説明できない、合理的理解を超えた」ものも存在します。

 オーナー系中小企業をみていると、本社社屋に、娯楽施設とかフィットネスクラブとか茶室とか業務に関係のない施設も併設されていたりする光景や、社長室が無駄に広く、動物の剥製、著名人とのスナップ写真、有名絵画、高級酒、さらには銅像や兜(かぶと)など高価というだけでセンスが感じられない品々が無秩序に羅列されている光景に遭遇することがあります。また、素材メーカーや部品メーカーの企業が、突然イタリアンレストランやブティックの経営に乗り出し「これまでの経歴がよく分からないが社長と親交のある女性」が当該子会社のトップに抜擢されたり、ということもたまにあります。

 カネや時間や労力が相当投入されますが、当該設備への投資は「カネを増やす」「出て行くカネを減らす」「時間を節約する」「手間を節約する」のいずれにも無関係であり、これら目的への貢献もほぼ皆無です(社内外には、相応の説明がなされますが、いずれの説明も複雑怪奇な説明であり、案の定、いずれも短い時間に赤字を積み上げ撤退しているようです)。

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