経営トップのための"法律オンチ"脱却講座

ケース13:採用は自由、されど解雇は不自由。それも、シビれるくらい不自由 弁護士・ニューヨーク州弁護士 畑中 鉄丸(はたなか てつまる) 氏

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確実に解雇できるのは本人が有罪判決を受けたときくらい!?

 最近、法律のことを詳しく知らない経営者の方から「解雇の金銭解決制度があるから、カネさえ払えばクビ切りは自由なんだろ?」という話が寄せられますが、この制度は、いまだ法改正の議論段階であり、2015年10月現在、このような制度は「経営者の妄想を前提にした、夢、マボロシのファンタジーの制度」にすぎません。残念!

 このように、日本では、一旦「ヒトを雇う」という契約をしてしまうと、その解消は、大変、大変、大変(大事なことなので3回言いました)難しいのです。

 「難しい、難しいとか言うけど、それって、期待値を低くして、ギャラをせしめようっていう弁護士さんのよくやる手口で、こんなの、弁護士の努力次第で何とかなんだろ?立派な資格とスキルをお持ちなんだし、難しいことをナントカするのが弁護士さんなんだし」なんて声が聞こえてきそうなので(こういうことをおっしゃるクライアント経営者は、実際、実に多いです)、わかるように明確に言いますと、「一旦採用しちゃった人間を、本人が辞めたくないと言っている状態で、本人の意向を無視して一方的に辞めさせるのは、まず不可能」というのが、日本の法令環境なのです。

 解雇が認められるのは、例えば、それこそ、殺人や傷害や強盗や窃盗や横領背任などの犯罪行為や、それに準じるような非違行為を従業員がやってしまった場合くらいであり、そのような行為が存在しないのであれば、解雇は不可能というのが現状です。

 さらに言いますと、当該犯罪行為をやらかした従業員が「逮捕された」「起訴された」程度では、解雇は認められません。

 「無罪の推定」という近代社会のルールがある以上、「逮捕」や「起訴」が間違っている可能性もありえるので、せいぜい、休職(起訴休職)が認められる程度であり、極論を言えば、「正々堂々と、どこからもケチがつけられず、解雇できるのは、有罪判決が出てから」とも言えるのです。

 現実問題として、殺人だの強姦だの窃盗・強盗といった、社会的にも一切同情を誘わない凶悪な犯罪を行い、しかも本人が「間違いなくやりました」と認めており、これ以上本人を雇用し続けることが企業にとって大きなダメージになるような場合、無罪の推定とか起訴休職制度とか、そんな御託を無視して、解雇しても問題ないでしょうし、解雇したところで本人も争わないでしょう。

 犯行を認めておきながら、解雇を争った、となっては、本人は「社会的制裁、経済的制裁は受けていないし、反省もしていないし、情状最悪」と評価され、かなり厳しい量刑判断をされることになりますから。

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