経営トップのための"法律オンチ"脱却講座

ケース13:採用は自由、されど解雇は不自由。それも、シビれるくらい不自由 弁護士・ニューヨーク州弁護士 畑中 鉄丸(はたなか てつまる) 氏

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 この退職勧奨にあたっては、浪花節で説得するというような、日本的なウェットな方法も大事かとは思われますが、前掲の裁判例に従って、

(1)能力が不足していることを示す客観的な資料を作成しておくこと

そのためには、求められる能力を明確に定義し、基準を定めておく必要があります。

(絶対評価で「著しく労働能力が劣る」ことを、将来立証するための準備です。)

(2)客観的な資料によって明確となった能力不足の点について、従業員に対して改善の機会を与えたことを記録しておくこと

(「向上の見込みがない」との要件との関係で、体系的な教育、指導を実施したのになお、向上しなかった、ということを、将来立証するための準備です。)

も並行して実施しておき、

「裁判例に照らしても、キミについては普通解雇が認められる事案であるが、会社としても穏便に、キミからの希望退職の形で終了させたい」

という説得の方法も確保するべきでしょうね。

 要するに、辞めさせたい従業員と縁を切るには、

アメ(1カ月間の予告手当だけでなく、退職後の一定期間の生活を保障する、「ある程度、気前のいい、捨扶持」の提示)と
ムチと
浪花節と
「ケンカしても勝ち目はないので、無駄な抵抗はやめなさい」という説得

といった、ロジックや材料を総動員し、「総合芸術」のごとく、説得や交渉のための頭脳やスキルをフル活用して、相手に退職を納得してもらい、辞めていってもらうのがもっとも正しい方法です。

 まちがっても、「お前なんか、クビじゃ!ファイヤーじゃ!」はやってはいけません。

 さらに言うと、忙しいからといって、能力や適性を考えず、だれでもかれでもバカスカ採用する、という姿勢自体、考え直したほうがいいかもしれませんね。

畑中 鉄丸(はたなか てつまる)
弁護士・ニューヨーク州弁護士。東京大学法学部在学中に司法試験(日本)及び国家公務員試験1種に各合格。新日本製鉄勤務等を経て、弁護士登録し、1998年に渡米。ペンシルバニア大ロースクール(修士課程)留学、ニューヨーク州司法試験合格後、Kirkland&Ellis法律事務所勤務等を経て、弁護士法人畑中鐵丸法律事務所を設立し、現在に至る。多数の企業・医療機関・学校法人等の顧問弁護士を務めるほか、日本弁護士連合会債権回収に関する委員会(サービサー委員会)委員長、日本商品先物取引協会あっせん・調停委員、一般社団法人ニューメディアリスク協会理事等を務める。著書は「企業法務バイブル」シリーズ(弘文堂)、「戦略的コンプライアンス経営」(弘文堂)、「ビジネス契約実務大全」(企業研究会、分担執筆)、「法律オンチが会社を滅ぼす」(東洋経済新報社)、「こんな法務じゃ会社がつぶれる」「生兵法務は大怪我のもと!」(第一法規)、電子書籍「鉄丸弁護士が説く!会社倒産シグナル10」(アクセルマーク株式会社)、「ヤヴァイ会社の死亡フラグ10」(経世出版)等多数。

キーワード:経営、マーケティング、グローバル化、働き方改革、人材、イノベーション、経営層

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