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ケース18:ノーアクションレターを使ってうまいこと攻めろ! 弁護士・ニューヨーク州弁護士 畑中 鉄丸 氏

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ノーアクションレターは「規制ニッチ」での新規事業推進を後押し

 今から見れば、当たり前といえば当たり前のシステムですが、導入当初は、画期的な制度であり、私などは、「(これまで前近代的で古風なまでに権力的で裁量的な)日本の行政システムがここまで進歩したか」という感慨を持ちました。

 すなわち、設例のような、自分がやろうとしている新しいビジネスが法令グレーゾーンに該当する危険がある場合、このような「お墨付きを得る」機会がなければ、「チャンスをふいにするか、牢屋に入ったり当局からおとがめを受けるリスクを覚悟するか」という難問が立ちはだかり、ハムレットのように悩まなければなりませんでした。

 しかしながら、このような制度があるなら、活用しない手はありません。実際、先端的な事業を行う企業の多くが、この制度を活用して、今まで「グレーゾーンだし、怖いからやめておこう」として諦めていた「規制ニッチ」のビジネス分野における安全を確認し、どんどん積極的に新しい事業を起こしています。各省庁のノーアクションレターについてのウェブサイトを見ても、これまでどのような企業がどのような「お墨付き」を得たか、ということが公表されており、非常に参考になります。

 ただ、使う際には注意点があります。まず、時間と手間とコストがかかります。回答期限が決められているとはいえ、フォーマルな手続である以上、ある程度の時間は必要であり、それに、照会書の企画・検討・作成の準備時間や、専門家である弁護士との打ち合わせなどの時間も考えると、相当な準備の時間とエネルギーとコストを念頭においておく必要があります。

 また、すべての質問に明確な回答が得られるとは限りません。何せ、相手はプロの行政マン、優秀な官僚です。言質を取られないよう、細心の注意を払い、あるいは肝心なところを曖昧にして煙に巻くような言い方をするかもしれません。ですので、散々時間と手間をかけても、曖昧さが残るような回答しか得られない可能性も否定できません。

 最後に、回答は一般に公開されます。特に、競合他社には秘密にしておきたいような企業機密を前提にした照会をすると、いつの間にか、ダダ漏れしていて、パクられた、という悲惨なことにもなりかねません。

 こういった注意点はあるものの、日本の行政システムが画期的な進化を遂げていることは事実であり、新しい規制ニッチや規制グレーゾーンに事業機会を見いだす野心的な企業は、ウジウジ悩んだり、あるいは法令抵触の危険を考えない無謀な冒険をすることなく、ルールを活用して、クールに、スマートに、セキュアに、うまいこと商売を立上げることを考えるべきです。

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