経営トップのための"法律オンチ"脱却講座

ケース17:不祥事記者会見をなんとか乗り切るための極意 弁護士・ニューヨーク州弁護士 畑中 鉄丸(はたなか てつまる) 氏

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今回の経営者・末狡社長への処方箋

 社長、普段、テレビなどで見る官房長官や官僚が行う政府の説明を聞く際、さぞかし、ムカついておられると思います。

 「なんだあの木で鼻をくくったような言い方は、国民をバカにしやがって」「やたらと難しい、眠気を誘うような高尚な言葉でごまかしやがって」「しかも、ボソボソと、やる気もなく、下を向いて、いじいじ、陰気に話しやがって」と思われているのではないでしょうか。

 もちろん、私も、一市民としては、同じ感情を抱くことはあります。しかし、「大事を小事に、小事を無事に至らしめる、危機管理のスキルの1つ」としては、いろいろ参考にすべき点が多いのも事実です。

 そもそも、この種のデータ偽装はあってはならないことですし、最近特に、世間の目が厳しくなっていますので、今後は、このようないい加減なことをしないよう、しっかりと経営管理をしてください。

 とはいえ、目先の危機は、危機です。なんとしてでも乗り切らなければなりません。この際、非常手段として、霞が関言葉や官僚答弁を参考に、でも、木で鼻をくくったようなイメージで無用なバッシングを被ることがないよう、バランスを取りながらなんとか窮地を脱する方法を考えましょう。

 「難しい専門用語を散りばめる」「やましいポイントや突かれたくないポイントは丁寧で上品な修飾語でごまかす」「責任の所在を"組織全体の空気"といった曖昧模糊としたものにしてぼかす」、とはいえ、「全体として、責任の重大さを痛感し、反省して、申し訳なさそうで悔しそうな表情をして噛みしめる」、さらには、「起こってしまったことより、今後の改善に向けて、努力する姿勢をアピールする」。まあ、決して褒められた対応ではありませんが、極度に「巧言令色」にならない程度に、ソフトランディングを目指してください。

 改善や解決の努力は、ひたむきに、謙虚に、継続する姿勢を示すことです。他方で、時間的冗長性の確保が最優先です。手厳しい質問には、「改善に向け努力をするが、どうしても時間が必要なので、少しばかり再起のための時間とチャンスをいただきたい」と繰り返すなどして、情に訴えましょうか。

 まあ、ちょっと、あくどい話をしますと、人の噂も2カ月半しか続かないというのはある意味真実です。芸能人のスキャンダルや、政治家の疑獄事件、別の会社のもっと大きな不祥事、さらには社会の耳目を集める大きな事件が出てきて、うやむやになっていくことも否定できませんし、刑事事件や行政処分といった重大事に至ることなく、なんとか生き延びることさえできれば、そのうち事件が風化し、いつの間にかちゃっかり再生した企業なんて山のようにあります。

 とはいえ、以上の指南はやむを得ず不祥事会見をしなければならない事態に陥った場合の対応テクニックについてであって、こうしたテクニックがあれば不祥事を起こしても大丈夫だなんて、決して思わないでくださいね。2回目、3回目はありませんよ。今回の事件はしっかり受け止め、反省し、二度と繰り返さないようにしてくださいね。

畑中 鉄丸(はたなか てつまる)
弁護士・ニューヨーク州弁護士。東京大学法学部在学中に司法試験(日本)及び国家公務員試験1種に各合格。新日本製鉄勤務等を経て、弁護士登録し、1998年に渡米。ペンシルバニア大ロースクール(修士課程)留学、ニューヨーク州司法試験合格後、Kirkland&Ellis法律事務所勤務等を経て、弁護士法人畑中鐵丸法律事務所を設立し、現在に至る。多数の企業・医療機関・学校法人等の顧問弁護士を務めるほか、日本弁護士連合会債権回収に関する委員会(サービサー委員会)委員長、日本商品先物取引協会あっせん・調停委員、一般社団法人ニューメディアリスク協会理事、子ども安全学会理事長等を歴任。著書は「企業法務バイブル」シリーズ(弘文堂)、「戦略的コンプライアンス経営」(弘文堂)、「ビジネス契約実務大全」(企業研究会、分担執筆)、「法律オンチが会社を滅ぼす」(東洋経済新報社)、「こんな法務じゃ会社がつぶれる」「生兵法務は大怪我のもと!」(第一法規)、「ヤヴァイ会社の死亡フラグ10」(経世出版)等多数。最新刊は「こんな法務じゃ会社があぶない」(2006年4月、第一法規)。

キーワード:経営、マーケティング、グローバル化、働き方改革、人材、イノベーション、経営層

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