経営トップのための"法律オンチ"脱却講座

ケース12:ヤバイ情報は聞かなかったことにして乗り切れ!? 弁護士・ニューヨーク州弁護士 畑中 鉄丸(はたなか てつまる) 氏

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今回の経営者・仁柿(にがき)取締役への処方箋

 早めにご相談に来られてよかったですね。

 「取締役」になってしまった以上は、「取締役」としての知識経験がまだ無い、という言い訳は全く通用せず、普通に「取締役」の責任を追及されますよ。「大先輩ばかりが取締役会にいるから、緊張して発言できない」、という言い訳も通用しません。

 「取締役」は誰でもなれるのに、その実際の能力とはカンケーなく、「会社法その他の法令に通暁したプロ」とみなされ、無知ゆえにやっちまったこと・無知ゆえに放置してしまったこと、について、ケツを拭かされる立場なんです。

 さきほどご紹介した判例のとおり、会社にとって「今そこにある危機」がある状態で、小田原評定を繰り返し、「とりあえず様子を見よう」なんてやっていると、いつかは誰かが行政やマスコミに垂れ込んで、この判例の事件のような、最悪の事態になるでしょう。

 御社のようなソコソコの規模の食品会社が、違法な添加物を使っていたなんてハナシ、絶対に漏れるに決まってるじゃないですか。今の時代、匿名で行政に通報するとか、ネットで公表するとか、手段はいくらでもあるのですから、時間の問題です。

 そうなってしまう前に、とりあえずは、取締役会で、現状の取り扱いについて異議を明確に述べ、会社の損害を最小限度にとどめる方策を積極的に検討するべきである、との発言を、議事録に書いてもらうべきですね。

 取締役会がしばらく開催されないというのなら、取締役に与えられた権限である、「取締役会招集請求権」を行使するべきです。このあたり、会社法の知識が必要ですが、それこそ、法律の専門家に助言を求めるべきです。

 ズブの素人である自身の法常識などアテにせず、一人で悩まず、プロの弁護士をカネで雇って、法律知識を「購入」すればいいだけのお話です。

 現状、仁柿さんは、取締役会議事録に異議をとどめていない状態でしょうから、法律上は、仁柿さんも、「しばらく公表しない」という決議に賛成したものと推定されてしまっている格好です。後から、「いや、オレは、取締役会で、ちゃんと公表しようよ、対応しようよ、って言ってたんだけどさ、重鎮たちがオレを無視したんですよ、本当ですよ!」などと言っても、後の祭りです。

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