経営トップのための"法律オンチ"脱却講座

ケース12:ヤバイ情報は聞かなかったことにして乗り切れ!? 弁護士・ニューヨーク州弁護士 畑中 鉄丸(はたなか てつまる) 氏

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

善管注意義務違反をめぐる最高裁判例

◯最高裁平成22年2月12日決定、大阪高裁平成18年6月9日判決

 実は、さらに裁判例を調べますと、仁柿さんが話してくれた内容と同じような状況の事件があります。

 裁判所は、「未承認添加物が混入している商品の販売終了から半年後に、未承認添加物が混入していたことを知った取締役ら」について、「その事実の公表や、会社の信頼喪失を最小限度に食い止める方策を積極的に検討する義務があったのに、それをしなかった」として、当時の取締役ら11名に対し、1名は約5億3000万円、1名は約5億6000万円、残り9名については、約2億1000万円の損害賠償を会社に支払うよう命じる判決を下しました。

 この裁判では、被告となった取締役らの代理人弁護士は、先ほどの「経営判断原則」を持ち出し、「実際の健康被害はあり得なかった」「商品回収は既に不可能だった」「公表すれば、消費者からの非難を免れなかった」という状況では、「自ら積極的には公表しない」という選択も、当時、適切で合理的であった、と反論を展開し、免責のための弁解を試みました。

 しかし、裁判所は、

「現代の風潮として、消費者は食品の安全性については極めて敏感」

「その食品添加物が実際に健康被害をもたらすおそれがあるのかどうかにかかわらず、違法性を知りながら販売を継続したという事実だけで、当該食品販売会社の信頼性は大きく損なわれる」

「マスコミの姿勢や世論が、企業の不祥事や隠ぺい体質について敏感であり、少しでも不祥事を隠ぺいするとみられるようなことがあると、しばしばそのこと自体が大々的に取り上げられ、追及がエスカレートし、それにより企業の信頼が大きく傷つく結果になることが過去の事例に照らしても明らか

「したがって、現に行われてしまった重大な違法行為によって会社が受ける企業としての信頼喪失の損害を最小限度に止める方策を積極的に検討することこそが、このとき経営者に求められていたことは明らか

「被告らは、そのための方策を取締役会で明示的に議論することもなく、『自ら積極的には公表しない』などというあいまいで、成り行き任せの方針を、手続き的にもあいまいなまま黙示的に事実上承認したのである。それは、到底、『経営判断』というに値しないものというしかない」と述べ、取締役らの主張を一蹴しました。

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。