経営トップのための"法律オンチ"脱却講座

ケース12:ヤバイ情報は聞かなかったことにして乗り切れ!? 弁護士・ニューヨーク州弁護士 畑中 鉄丸(はたなか てつまる) 氏

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

顧問弁護士 畑中鉄丸の助言

誰でもなれる取締役

 「取締役」というステータスを獲得するためには、特に試験制度はありません。したがって、「取締役」に必要とされる知識技能があることが確認されないまま、誰でも、「取締役」になれてしまいます。

 このように、「手軽になれる」という門戸の広さの割には、取締役は、重い責任を負わされています。

 そもそも、日本社会において、「ステータス」と言われるものを有している人種は、当該「ステータス」を獲得する過程で、一定の厳しい条件を達成していることが普通です。

 例えば、「医者」というステータスですと、医学部入試を突破し、6年間進級試験に耐え、さらに医師国家試験に合格する必要がありますし、「パイロット」というステータスについても、航空会社の採用試験に合格した上で、操縦士試験に合格する必要があります。「弁護士」についても、一旦ロースクールの入試に受かってから、司法試験に合格し、さらに、最高裁司法研修所の卒業試験(いわゆる「二回試験」)に合格する必要があります。

 これらは、いずれも「ある職業、ステータスに就くために必要となる知識技能の習得について時間、労力、コストを要求し、当該職業に必要な、最低限度については、一応身につけさせる」という点で共通しています。

 しかし、「取締役」というステータスについては、やや状況が異なります。

 「取締役」というステータスを入手するにあたっては、試験というものは存在しません。取締役に必要となる知識技能について、講習会の受講を義務付けたり、ペーパー試験ないし実技試験を課したりする、ということもありません。「取締役」に必要とされる知識技能が一切無い、という方であっても、「取締役」というステータスを入手することが可能なのです。

 もちろん、大きな会社の取締役になるためには、会社に入って何十年も頑張って知識と技能を身につけ、能力と人格を周りから認められ、「株主総会」という通過儀礼を通過する必要があります。

 しかし、「従業員」として要求される知識技能と、「取締役」として要求される知識技能は、重なり合う部分もあるとはいえ、重なり合いがない重要部分もあり、やはり、「『取締役』として必要となる知識・技能を最低限身につけているかの確認」がなされていない点に、変わりはありません。

 このように、「誰でもなれてしまう」取締役には、「誰でもなれてしまう」という門戸の広さ、お手軽さの割には、次に述べるような、恐ろしく重たい責任が課せられているのです。

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。