経営トップのための"法律オンチ"脱却講座

ケース12:ヤバイ情報は聞かなかったことにして乗り切れ!? 弁護士・ニューヨーク州弁護士 畑中 鉄丸(はたなか てつまる) 氏

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

「この『HIROSHIMA焼』は、製造終了して、既に半年以上たってる、今頃みんな胃袋の中、じゃなくて、もっと先だ、下水に流れちまって海のプランクトンのエサになってるところだから、回収なんてできないぞ!」

「この添加物は、日本では未承認らしいが、中国だけでなく、アメリカでも普通に使われている。しかも、WHO(世界保健機関)の基準値を下回る濃度で使われていたんだから、健康被害の心配なんてナッシングだ!」

「それが証拠に、この『HIROSHIMA焼』、1000万個以上出荷されてんのに、一切、ハラこわした、とかいうクレームはないぞ! 心配なんてナイナイ!」

「今更、回収なんてできない状態なのに、ヘンにこの話を公表してみろ、うまい説明の仕方をしなけりゃ、既に胃袋に飲み込まれた後だ、食った消費者が、気持ち悪くなったとか言い出して暴れて、マスコミやネットで叩かれまくるぞ! そうなったら、どうなる? 今度こそ会社がつぶれるぞ!?」

「ヘタに公表したら、それこそ、会社を危険にさらす行為になる。もし公表するとしても、世間の目が集中するような大事件とか大イベントがあるときとかに、シレっと出すのが、会社の利益というモンだろう!」

「取締役の責任だって? そもそも、今公表して、会社が大損害を受けたら、責任とれんのかね? とりあえずは様子をみとくのが最善だろう。こういうときは、見て見ぬふりというか、聞こえないふりが一番だ!」

「ということで、未承認添加物の混入、だなんてヤバイ話は、一旦、『聞かなかったこと』にしておこう。もっと前向きの、カネになる話を議論するのが、取締役会のあるべき姿だ!」

「カッコ良く日本語で表現すると、『自ら積極的には公表しない方針』の採用だな」

「しかも、ウチの会社は、D&O保険(Directors and officers保険;会社役員賠償責任保険)に入ってくれているからな。もし、取締役の責任が問題になったとしても、保険会社がカバーしてくれるから、大丈夫大丈夫!」

といった具合に、大先輩の重役たちは、シリアスな議論をしつつも、最後はなんとも楽観的な方向に話をもっていっています。

 しかし、なんですね。取締役会って、もっと立派で前向きな議論をしているかと思ったら、こんなくだらなくて下劣で卑怯な話をしているんですね。なんだか、幻滅です。

 私なんて、下っ端ですから、わかったようなカオをしてウンウンうなずくことしかできないのですが、このまんま、大先輩方に従っておけば、問題はないのでしょうか??

 私が若いころとてもお世話になった上司で、今常務取締役をやっておられる野々村という方がいらっしゃるんですが、その方が「代表訴訟のターゲットなんかになっちゃったら、大変かもなー。せっかく家買ったけど、まだローン残っているし。保険があるとかいっても、入る時は平身低頭、保険金払うときには、知らんぷりってのが保険屋だし、なんだか心配だなー。やばいかもなー」なんて、ブツブツつぶやいていたのが気になって仕方ありません。

 とりあえずは、様子見、ということでよろしいでしょうかねえ? 先生、ぶっちゃけ、どう思います?