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ケース8:行政処分ごときにビビるな! 弁護士・ニューヨーク州弁護士 畑中 鉄丸(はたなか てつまる) 氏

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取消訴訟(国家権力が国家権力にブレーキをかける!?)

 この三権分立というシステムの中の具体的な仕組みの一つが「取消訴訟」というものです。

 行政権は、国会が作った法律を執行し、法律を国民それぞれに守らせて、秩序ある社会を維持することを仕事としています。例えば消費者庁は、「ウソ広告を禁止し、ウソ広告を出している者に対して『ウソ広告を出すな』『消費者に対して、訂正の広告をしろ』との命令を出す」ことで、消費者の利益を守ってくれています。

 学歴不問、経歴不問、能力不問、選挙に通りさえすれば誰でもなれる国会議員とは異なり、行政官僚は、「小さなころから地味な努力を怠らず、優秀で責任感のあるエリート」が選抜されています。

 したがって、彼ら行政官僚に任せていれば、問題は多分起こらないハズなのですが、それでも問題は発生します。

 そこで、「行政事件訴訟法」という法律が国会によって作られており、この法律では、行政が行った処分について、「取り消す」権限を、司法権に与えています。

 つまり、「行政」という奉行所が行った行為を、別の奉行所である「裁判所」が、「チョットチョット、その行為はダメだから取り消すよ」などと言って、実際に取り消すことができてしまうのです。

訴訟を起こしても、お上の命令は生きたまま

 このように、行政がチョンボをした場合に、司法権がこれをとがめて取り消すという仕組みはあるのですが、さすがの司法権も、「全く調べもなく、証拠もなく、裁判官が気ままに、行政権が出した処分を取り消す」なんてことはできません。もしそのようなことを許せば、今度は、国家権力の一つである「司法権」が暴走してしまうことになります。

 そこで、行政事件訴訟法では、「取消訴訟を提起したとしても、裁判所が取り消すとの判断をするまでは、原則として、行政権が下した処分の効力はそのままにする」と決められております。

 すなわち、「司法権」という別の奉行所に直訴しても、証拠をきちんと調べてからでないと、「行政権」という奉行所が出した命令は、生きたままとなるのです。

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