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ケース10:"固定残業代制度"で、残業規制も難なくクリア!? 弁護士・ニューヨーク州弁護士 畑中 鉄丸(はたなか てつまる) 氏

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固定残業代制度の導入方法

 このように企業にとっても、やる気のある労働者にとってもメリットがある固定残業代制度ですから、実務上もよく使われているようです。

 この固定残業代制度そのものについては、明確かつ決定的な法令あるいは裁判上の根拠はない状態ですが、「実務上、一応、違法ではない」という扱いが定着しつつあるようです。

 とはいえ、固定残業代制度は運用いかんによっては、労働法上グレーとなるような事態も発生するようで、労働者と企業の間で「紛争の種」にもなっており、実際、訴訟等も多数提起されています。

 特に、「固定された残業代」とされるものが、「通常の時間外労働」に充てられるのか、「深夜手当」に充てられるのか、「休日出勤手当」に充てられるのかが不明確であるということが、固定残業代制度にまつわる紛争の発火点になるようです。

 すなわち、「割増賃金」に対応する労働が提供される時間帯によって、「深夜手当」とか「単なる時間外労働」とか「月60時間以上の時間外労働」とか「休日出勤」とか、それぞれ異なり、この差異によって、「上乗せ賃金の割合」が、基本給に対する「2割5分」なのか「3割5分」なのか「5割」なのか、それぞれ異なることが紛争の火種につながる、というわけです。

 要するに、一緒くたに「固定残業代」としてしまうと、「固定残業代」がどのような「割増賃金」に充当されるのか明らかにならず、労働者としては、いくらの「普通の時間外労働」の「割増賃金」が支払われ、いくら「深夜手当」が支払われたのかわかりません。この事態を捉えて、労働者としては「曖昧な基準で残業代が計算されており、本当は支払われるべき残業代がきちんと支払われていない」として、残業代の支払いを求めてくるのです。

 そもそも「基本給」と区別して、上乗せのある「割増賃金」の支払いを企業に義務付けているのは、「時間外労働をできるだけ企業に抑制させ、仮に時間外労働をさせるにしても、労働者に、きちんと負担に応じた高い賃金を支払うべし」という制度目的によるものです。

 この制度目的からすると、きちんと残業代の計算ができないということは、曖昧な支払基準のもとに労働者をだまして、不当に長期間の時間外労働をさせる可能性があり、「企業に対する時間外労働の抑制をさせよう」という法律の狙いが維持できなくなる可能性があります。

 そこで、この種の「固定残業代」にかかわる近時の裁判においては、「固定残業代制度」導入に際しては、「固定残業代」のうちいくらが「普通の時間外労働」の「割増賃金」に充当され、いくらが「深夜手当」に充当されるか等といったことが、システマチックに定められていることが必要、と判断する傾向にあるようです。

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