経営トップのための"法律オンチ"脱却講座

ケース10:"固定残業代制度"で、残業規制も難なくクリア!? 弁護士・ニューヨーク州弁護士 畑中 鉄丸(はたなか てつまる) 氏

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正直者の企業がばかを見る

 このように、労働法制による「割増賃金」は労働者保護のために存在するのですが、他方で、企業がばか正直に労働法を順守していくと、今度は企業にとって思いもかけない負担が生じることになります。

 人件費のコストを抑制しようとして残業代を支払わない、あるいは、残業があるのに残業はなかったことにする「サービス残業」などの法律違反をしてしまうと、「ブラック企業」と騒がれたり、あるいは労基署から調査を受けたりという厄介なことに陥ってしまいかねません。

 そこで、企業としては、しっかりと労働法を守っていくこととし、きちんと法律に定められたとおりの「割増賃金」を支払うことになります。

 他方、このように時間外労働に対してバカ高い「割増賃金」が支払われるということは、労働者にとっては、「長く職場にいてだらだら仕事」したほうが、割増分上乗せした額の給料がもらえることを意味します。そうなると、手際よく仕事を終わらせるよりも、「だらだら仕事」をした方が労働者にとって効率的に稼げるということを意味します。

 裏を返せば、企業にとっては労働者に「だらだら仕事」をするインセンティブを与えてしまっており、「だらだら仕事」のやり方をする労働者を増やして、非効率な経営になってしまい、企業経営のコストが膨張することを意味しています。

 本来労働法が労働時間に関し、労働者に手厚い保護を与えているのは、「強い企業」に対する「弱い労働者」を守ることが目的でした。他方で、企業がこのような労働法をきちんと守ろうとすると、「だらだら仕事」をする労働者がオイシイ思いをして、企業は、経営が非効率になるわ、コストが増大するわ、と労働法が本来予定していない「負の側面」が顔を出すことになるのです。

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