経営トップのための"法律オンチ"脱却講座

ケース7:裁判所からみれば、企業間紛争も「犬も食わない、しょうもない夫婦げんか」と同じ?! 弁護士・ニューヨーク州弁護士 畑中 鉄丸(はたなか てつまる) 氏

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今回の経営者・富井(トミイ)社長への処方箋

 それでは、相談内容についてみていきましょう。

 富井社長は、貸金という民事上の権利義務関係の判定の問題と、誹謗中傷等への対策を混同されている点が大きな問題です。

 心情的には「ナメられたくない」「一発かましてやりたい」というもので共通しているのでしょうが、法的に両者を混在する形で、たいした証拠もなし(というか、法的には証拠は皆無)に相手方に威圧を加えるための、峻烈な裁判外対応を推進することは、戦略的には無意味であり有害です。

 前述のとおり、「肝心要の証拠がないので、その、欠落した証拠を補強する趣旨で、強硬な方法で威嚇する」という安直で手っ取り早いが品のない手段に出たときには、「事実が存在するかどうかも不明な段階で、刑事手続きなんて強烈で威嚇的な手段を利用しようとする品のない人間がすることだから、同じく証拠に乏しいこの貸金の存在自体も怪しいぞ」などと裁判所に思われかねません。

 ですので、まずは犯罪だの刑事告訴だのという話は分離して、民事上の貸金返還の問題をスタンドアロン化して事務的に、かつ冷静に、民事訴訟を提起して、解決を求めることが適切です。貸金の要件事実は、貸金合意とそれに基づく貸付(金銭の移動)ですから、これを満たすように事実主張を淡々と行っていくべきです。金銭の移動に関しては振り込み等でさすがに容易に立証可能と思われますが、貸金合意に関しては、決定的な証拠(金銭消費貸借契約書や借用書)を欠いており、この点において、本件事業の成り立ちといった事実経緯から詳細に主張していく必要があることでしょう。

 貸金合意と関係のない誹謗中傷等を貸金の裁判において援用するに際しては、この判断を行う上で必須のものではなく、かえって裁判官を混乱させ、困らせることにもなりかねない「無意味でしょーもないサイドストーリー」ですから、主張するにしても極めて謙抑的に取り扱う必要があります。

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