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ケース7:裁判所からみれば、企業間紛争も「犬も食わない、しょうもない夫婦げんか」と同じ?! 弁護士・ニューヨーク州弁護士 畑中 鉄丸(はたなか てつまる) 氏

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民事紛争のスマートでエレガントなススメ方

 以上を前提としますと、民事紛争の当事者として採るべき対応姿勢としては、こちらにどれほど分があると考えても、「証拠による裁判を行い、品の良い当事者を好む裁判所」との関係では、謙抑的で、慎重で、スマートでエレガントな態度を徹底すべき、ということになります。すなわち、裁判所が好む「お上品で、可哀想な被害者」と捉えられる行動をとることが上策、ということなのです。

 たとえば、名誉毀損的な行為が行われている、と思われる事例では、まずはそれを基礎づける「事実の確認」を確実にすることが先決課題となるのであり、証拠に基づく事実確認もできていないのにむやみに相手を貶めたりすると、「被害者的立場の当事者ががいつの間にか加害者扱いされる」という攻守逆転状況すら発生しかねません。

 メール等で名誉や社会的信用を貶めるような表現行為がなされているのであれば、「・・・というメールが誰々宛に送られておりますが、この・・・という文言については、○○という趣旨でしょうか」とか、「この△△社というのは、もしかしてですが、当方のことをご指摘でしょうか」といった相手が否定し得ない事実(わかりきっていること)の事実照会をし続け、相手方としても争い得ない事実関係を積み重ねていくことによって、後日の裁判で、裁判所が好意的に評価してくれるような証拠を獲得していくことが、戦略的に正しい行動である、と言えます。

 このような、「(相手としても)わかりきった事実を、相手方も認めざるをえない形で積み重ねること」、すなわち「『もしかして』とは思っていたが、相手に直接確認してみても、この文面は私のことを指しているということだし、指摘されている意味合いも○○という意味だった」ということの確認ができて、はじめて、裁判の世界でも、「被害者である」との主張が合理的で正当性を有し、裁判所の支援と保護を求めることができるのです。

 裁判所というエレガンスに満ちた保守的な国家機関は、「品の良い人間」=「勤勉に、合理的に行動する人間」が大好きです。

 あらゆる人間は、「一定の疑義に基づいて照会を受けた以上は、真摯に回答することが通常」と考えており、仮に「回答を拒否したり、不合理な回答をしたり、という不誠実な態度を平然と貫く」という人間がいるとすれば、「照会した側が指摘した疑義が真実であり、だからこそ、回答者が不誠実な対応に出たのであろう」という経験則が働きます。

 もちろん、このような経験則を気にかけることなく照会を殊更無視し、誹謗中傷等を続ける相手方も存在しますが、そのような場合には、「無視」ないし「不誠実に回答を拒否する」という不合理な姿勢(=「不誠実で品位の欠如した、不合理な人種である」ということを示す有力な根拠)をもって、裁判所から、誹謗中傷等の事実があったことを「合理的に認定」させるような状況に持ち込むことで、全体としての交渉優位の状況を創出することが可能となるのです。

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