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ケース7:裁判所からみれば、企業間紛争も「犬も食わない、しょうもない夫婦げんか」と同じ?! 弁護士・ニューヨーク州弁護士 畑中 鉄丸(はたなか てつまる) 氏

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「証拠がなければ寝言扱いされる」ことに注意すべし

 このように、裁判所にとっては、「民事紛争が、規模の大小にかかわらず、『衝突するエゴの調整』課題にすぎない」という現実を忘れてはいけません。

 今回の相談のように、「証拠はないが、真実と正義はこちら側にある!」と思い込んでいる当事者は、「相手方はこんなにあくどい。ほら、これと、これと...!」といった形で、たいした証拠もそろっていないのに相手方への威圧に次々と及ぶ姿勢をとりがちです。

 明確な証拠がないにもかかわらず、相手方の主張について「名誉毀損だ」の「営業妨害だ」の、といった決め付けを行い、場合によっては警察や検察への告訴状を含め、峻烈というか、異常な行動に出てしまうことがあります。

 真に犯罪的行為が行われ、警察において捜査が開始され、告訴の受理や起訴にまでもっていければいいのですが、警察の保守性・慎重さ(悪い意味でもいい意味でも)は皆さんご存知のとおりです。

 警察も、民事紛争など「わしらが出張る必要もない、犬も食わない、しょーもない、エゴの突っ張り合いだから、当事者同士で、勝手にやらせとけ」と考えており(「民事不介入の原則」等と言ったりしますが、この原則は、シンプルに言えばそういう話です)、たいていは、単に話を聞いてもらうだけで終わります。

 そうしたときにこれら一連の事実経緯を見た裁判所がどのように考えるかといえば、「まぁ、キョーレツで、オゲレツ。所詮、『どっちもどっちのエゴの突っ張り合いやってるだけの、下賤で野蛮な欲のカタマリ』のくせに、一方的に被害者ぶって警察にまで相談をし、しかも取り上げられなかっただなんて。結局は、自分の方に決定的な証拠がないからこそ、相手にブラフを食らわせようとして、野蛮でエゲツナイ対応に出たのでしょ。ホント、やだやだ」と受け取られかねません。

 要するに、裁判所としては、このように「たいした証拠がないにもかかわらず、やたらめったら、威圧的な対応に出て、安直に打開を図ろう」という行為自体を「下劣で品がない」と考える傾向があるようです。

 こんな安直な打開策をやっていると、その他の重要な主張に関しても「ああ、この当事者は、証拠もなしに、あるいは、まともな証拠がないからこそ、次々と、相手を威嚇するような主張する、クレイジーなワカランチンなんだな」と推認されてしまう可能性があるため、最終的に不利な判断へとつながりかねないということです。

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