経営トップのための"法律オンチ"脱却講座

ケース6:トップの公私混同取引が発覚した! 弁護士・ニューヨーク州弁護士 畑中 鉄丸(はたなか てつまる) 氏

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 とはいえ、法貴弁護士としても、あまり事を大きくすると、結局、会社がトラブルにまみれて株価の下落や業績不振といった方向で企業価値を損ね、自身や、自身を送り込んでくれた銀行すら危機に陥れかねないため、穏便に済むような対応策を考えると思います。

 甲子社長の怒り自体、法的には不合理なものです。自身の置かれた状況をきちんと理解し、早期に法貴弁護士と話し合って、あまり大事(おおごと)にならない処理スキーム(とはいえ、上場企業である以上、開示規制その他はきちんと守らなければなりませんが)を検討してはいかがでしょうか。例えば、羽根川取締役は辞任してもらって、部長等に降格した上で働いてもらい、また、甲子社長も、年齢等を理由に、代表権のない会長か相談役に退く、という形で着地するのが適切かもしれません。

 上場企業といっても、オーナー色が色濃く残る企業においては、社長は、会社法をほとんど意識せず、上場以前の感覚で、会社と自身は一体のものとして考えてしまいがちです。そのため、本件のような利益相反取引規制をはじめとした諸規制に頓着せず、知らず知らずのうちに、法令違反リスクを抱える事態が散見されます。

 実際、ホームセンターを手広くチェーン展開する上場企業において、社長が「同社女性取締役の経営する会社」との間で、総額1億円超の不明瞭取引を行っていた疑いが浮上し、メディア等で取り上げられ、大きな事件に発展しました。同社は、第三者機関による調査に乗り出すとともに、予定していた四半期決算の発表を中止し、創業社長は、社長の座から引きずり降ろされる結果となっているようです(最終的には取締役相談役としての処遇で決着したようですが)。

 いずれにせよ、「100%株式を所有する会社」と、「少数といえども、一般株主に株を持ってもらうことになる上場企業」とでは、経営の自由度(やりたい放題できる、という意味ですが)は全く異なるので、法令違反リスクをしっかり踏まえ、適法・適切な経営を行うべきですね。

畑中 鉄丸(はたなか てつまる)
弁護士・ニューヨーク州弁護士。東京大学法学部在学中に司法試験(日本)及び国家公務員試験1種に各合格。新日本製鉄勤務等を経て、弁護士登録し、1998年に渡米。ペンシルバニア大ロースクール(修士課程)留学、ニューヨーク州司法試験合格後、Kirkland&Ellis法律事務所勤務等を経て、弁護士法人畑中鐵丸法律事務所を設立し、現在に至る。多数の企業・医療機関・学校法人等の顧問弁護士を務めるほか、日本弁護士連合会債権回収に関する委員会(サービサー委員会)委員長、日本商品先物取引協会あっせん・調停委員、一般社団法人ニューメディアリスク協会理事、子ども安全学会理事長等を務める。著書は「企業法務バイブル」シリーズ(弘文堂)、「戦略的コンプライアンス経営」(弘文堂)、「ビジネス契約実務大全」(企業研究会、分担執筆)、「法律オンチが会社を滅ぼす」(東洋経済新報社)、「こんな法務じゃ会社がつぶれる」「生兵法務は大怪我のもと!」(第一法規)、電子書籍「鉄丸弁護士が説く!会社倒産シグナル10」(アクセルマーク株式会社)等多数。

キーワード:経営、マーケティング、グローバル化、働き方改革、人材、イノベーション、経営層

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