経営トップのための"法律オンチ"脱却講座

ケース6:トップの公私混同取引が発覚した! 弁護士・ニューヨーク州弁護士 畑中 鉄丸(はたなか てつまる) 氏

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今回の経営者・甲子(こうし)社長への処方箋

 それでは、今回の相談内容についてみていきましょう。

 前述のとおり、甲子社長も、羽根川取締役も、コンドー商事の「取締役」でもあり、かつ、ハネピン社の「取締役」であることから、実際はともかく(まあ、おそらくは実際もそうなんでしょうが)、会社法上、「その立場を利用し、コンドー商事のカネで身内であるハネピン社にとって利益のある取引(利益相反取引)を行い、会社を私物化し、損害を与えている」という取り扱いがなされます。

 仮に、この土地の貸し借りが、本当に「コンドー商事にとって有利、あるいはフェアな取引だ」と言いたいのであれば、賃貸借契約を結ぶ前に、コンドー商事の取締役会で、賃料、賃貸期間等といった基本的な取引条件やその他重要な事実(「なぜど田舎の土地を借りる必要があるのか」「なぜ買わずに借りるという判断が合理的なのか」「賃料をどうやって決定したか」「近隣の相場賃料はいくらか」等)を開示した上で、その承認決議を得る必要があったのです。

 ところが、今回は、その承認を得ていないわけですから、会社法の規制に違反しており、賃貸借契約は無効になりますし、これによって会社に生じた損害は、甲子社長と羽根川取締役が連帯して、コンドー商事に対し弁償する必要があります。

 加えて、この話が公になれば、取引所からもお叱り、マスコミやネット掲示板でバッシング、株主総会で質問攻め、さらには株主代表訴訟といった事件に発展し、取締役の立場から引きずり降ろされることにもなりかねません。

 さらに、今回のケースでは、「自己の利益」を図る「目的」で、取締役会の事前の承認を得ず、かつ、事後報告を怠る法令違反をしていることから、「その任務に背く行為」をし、その結果、コンドー商事に「財産上の損害」を与えていることから、両名には特別背任罪が成立し、「10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金」に処される可能性もあります。

 すなわち、法貴弁護士の言っていることは、テキトーな脅しではなく、正確な法解釈に基づく、客観性のある主張といえます。

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