パクリ商標

大量出願OK 商標ルールの盲点 知財コミュニケーション研究所代表、弁理士 新井 信昭氏

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世の中の動き観察し先手 巧妙な手口

 特許庁の親方に当たる経済産業省なのに、前もって出願しておかなかったばかりにこんな面倒なことになってしまった案件ですが、『PREMIUMFRIDAY』の商標が経済産業省のものになって、とにかくよかったです。

 これで、プレミアムフライデー騒動は収まったわけですが、これは決してプレミアムなわけではありません。鉄槌を下すとまでは言いませんが、今後の特許庁はためらいなく次々と却下処分をしてくれるに違いありません。

 さて、話を戻しましょう。

 このような「困った」だらけの大量出願ですが、見るべきこともあります。それは、大量出願のために選択された「言葉群」です。

 B社やU氏の出願を分析してみると、『A・COIN』(商願2017 ― 28742)......『J・COIN』( 商願2017 ― 28789)......『Z・COIN』( 商願2017 ― 28869)のように、AからZまでのアルファベットを順に並べただけのオセロのマスを埋めるような商標選択も目につきますが、「時流にのった言葉」「流行語」「楽曲のタイトル」「自治体の名称」「イベント・映画のタイトル」等々が示すように、研ぎ澄まされた感性で世の中の動きに反応していることがわかります。「STAP細胞はあります」「民進党」「PPAP」、先に触れた「PREMIUMFRIDAY」や『J・COIN』などは、それらの典型例です。

 誤解をおそれずに言うなら、活字離れと言われる今日において、世の中の動きをよく観察してポイントを突いた言葉を拾い出そうとする努力には学ぶべき点もあります。大量出願問題を取り上げた私の願いは、U氏のその鋭い感性と観察の努力と商標法の知識を、人を困らせるためではなく世の中のために活用してもらうことです。

新井 信昭 著 『パクリ商標』(日本経済新聞出版社、2017年)「5 パクリ商標の抜け駆け出願は許されるか」から
新井 信昭(あらい・のぶあき)
知財コミュニケーション研究所代表、新井・橋本・保坂国際特許事務所パートナー

1954年生まれ。知財コンサル3000件超の知財活用コンサルタント、博士(工学)、技術経営修士(MOT)、弁理士。高卒後、新聞配達やタクシー運転手などで貯めた資金で世界一周の旅に出るなどユニークな経歴を持つ。著書に『レシピ公開「伊右衛門」と絶対秘密「コカ・コーラ」、どっちが賢い?』。

キーワード:経営、企画、営業、管理職、ものづくり、AI、イノベーション、プレーヤー、マーケティング

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