パクリ商標

大量出願OK 商標ルールの盲点 知財コミュニケーション研究所代表、弁理士 新井 信昭氏

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特定企業・個人が1万6000件出願の怪

 大量出願と言いますが、では、両者合わせてどれほどの件数なのでしょうか?

 この原稿を書いている2017年7月時点で、約1万6000件です。これがどれほどのものかと言うと、2016年中に出願された商標登録出願の総数がおおむね16万2000件ですから、ほぼ10件に1件が両者による出願だということになります。

 信じがたい数字です。大企業でもないB社と個人のU氏が、どうしてそのようなことができるのかというと、商標出願のルールをある意味上手に利用した「身勝手出世払い」をやろうとしているからです。1件の商標を出願すると、最低でも1万2000円必要です。それが1万6000件なら、2億円近いお金を払わなければならないわけです。

 警察署などで自動車運転免許を更新するときを思い出してください。更新手数料を払わないと、視力検査のような次のステップへ進めないシステムになっています。

 ところが、商標出願は、出願日を保ったまま数カ月ほど支払いを先延ばしができるシステムです。ウッカリ忘れることもあれば、納付額を間違えることもあるから、このような瑕疵を治癒させる機会をつくってあるのです。出願人にやさしいシステムなのです。

 世の中には、常に表と裏があります。やさしくしたつもりでも、それが仇になることがある。「出願の買い手が出てきたら、そのとき払いますね」と言ったかどうかはわかりませんが、このシステムに基づいた支払いの先延ばしが続いた結果、このような状態になっているのです。

 支払われなければ却下処分されるのだから問題がないようですが、実は違います。次の2つの点で困ったことになっています。

 1つは、大量出願により特許庁の職員の事務処理量が増えてしまうことです。職員の皆さんにはもっとほかにやってほしいことがあるのに、です。とどのつまり、税金の無駄遣いです。

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