パクリ商標

パクリは創造の扉? 絶対悪と限らず 知財コミュニケーション研究所代表、弁理士 新井 信昭氏

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明治期の法整備で老舗が対応

 次は『酢』についてです。私たちの食卓に欠かせない味付けの基本になる五つの調味料や、それらを使う順番の意味で「さしすせそ」の語が使われます。さ(砂糖)、し(塩)、す(酢)、せ(醤油)、そ(味噌)がそれです。その酢のトップブランドが「ミツカン」です。

 明治17年(1884年)に商標条例が作られました。これにより、農商務省内の商標登録所に商標を登録することで保護が受けられるようになりました。そこまではよいのですが、この制度は、同じ商標を複数の会社で使用することができなくなることを意味しました。後でご説明する「先願主義」です。

 それまで多くの酢業者が同時に使っていた「丸」で囲んだ「勘」の字のマークは、情報合戦の遅れにより他の業者によって三日前に出願されてしまいました。このため、急いで別の商標を選ばなければならなくなったのです。そこで、「三」を「〇(丸)」で囲んだ中埜家の家紋をバラバラにしました。そのうえで「三」の下に〇をつけ、前者を「ミツ」後者を「勘」にあやかって「カン」と読ませました。

新井 信昭 著 『パクリ商標』(日本経済新聞出版社、2017年)「2 パクリ商標は『絶対悪』か?」から
新井 信昭(あらい・のぶあき)
知財コミュニケーション研究所代表、新井・橋本・保坂国際特許事務所パートナー

1954年生まれ。知財コンサル3000件超の知財活用コンサルタント、博士(工学)、技術経営修士(MOT)、弁理士。高卒後、新聞配達やタクシー運転手などで貯めた資金で世界一周の旅に出るなどユニークな経歴を持つ。著書に『レシピ公開「伊右衛門」と絶対秘密「コカ・コーラ」、どっちが賢い?』。

キーワード:経営、企画、営業、管理職、ものづくり、AI、イノベーション、プレーヤー、マーケティング

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