パクリ商標

パクリは創造の扉? 絶対悪と限らず 知財コミュニケーション研究所代表、弁理士 新井 信昭氏

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人気にあやかった合法事例

 私から申し上げたいのは、大事なのは、ビジネス人はそうしたことをしっかりと理解したうえで、商標や商標権を扱う必要があるということです。

 なお、当然ながら、「合法」であるかどうかは、自分でそう思ったというだけではダメです。自分では「白」と思っていても、実はそれが「黒」であることもあります。「合法」「違法」の判断は必ず専門家に相談してください。どうしても白黒をつけたいなら、法の番人である裁判官にお願いしなければなりません。

 赤ちゃんの名前を考えるとき、歴史上の人物やスポーツ選手の名前に「ちなむ」ことや「あやかる」ことがよく行われます。ビジネスにしても、「勝ち馬に乗る」とか「便上する」ことが、勝ちパターンの一つでもあるわけです。これらをいちいち「パクリ」として非難することはありません。パクリ商標は「絶対悪」なのではないのです。ただ、そこには法律に基づく一定のルールがあり、そのルールに基づいたフェアなパクリだけが許されることは先に書いたとおりです。

 「ちなむ」「あやかる」などから生まれた商標を、具体的に見てみましょう。

キユーピーのマーク(商標登録第147269号 1922年10月27日登録)は米国生まれのキューピー人形にあやかっている。

キユーピーのマーク(商標登録第147269号 1922年10月27日登録)は米国生まれのキューピー人形にあやかっている。

 マヨネーズを大好物とする人のことを「マヨラー」と言います。私にはとても考えられないことですが、焼きそばや冷やし中華、さらには刺身にも使います。このマヨネーズを日本で最初に製造し今も業界トップが、キユーピー株式会社です(「ユ」の字は大きく書きます)。

 マヨネーズの「キューピー」は、1920年代に大人気だった「キューピー人形」にあやかったものです。ことの始めは、水産講習所(現・東京海洋大学)の先輩であった東洋製罐株式会社の創業者・高碕達之助氏のアイデアでした。

 その頃は、ちょうどキューピー人形が、日本でも人気急上昇の時期でした。食品工業株式会社(現・キユーピー株式会社)の実質的な創業者であり、かねてからマヨネーズの製造販売をしたいと考えていた中島董一郎氏は、高碕氏の話を聞いて、ブランドには是非「キューピー」を使いたいと考えました。

 アメリカ生まれで大人気ということももちろんですが、キューピーは愛と幸せを運ぶと言われ、マヨネーズを売り出すのにイメージ的にピッタリ、最高だと思われたのだそうです(無効2009 ― 890019審決公報、平成15 年(行ケ)第103号 審決取消請求事件判決文)。

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