英国海兵隊に学ぶリスクマネジメント

神鋼・日産...現場の不正、軍なら壊滅 マッキニーロジャーズ アジア太平洋代表パートナー 岩本仁氏

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

上層部の「プロセス重視」が励みに

 モニタリングは文字通りなら監視による規律違反の防止である。だが、それ以外にも重要な役割を持つ。情報共有が、権限委譲を受けた現場の士気を高める効果があるのだ。

 世界に報道写真が配信された、象徴的なシーンがある。2011年、米軍が国際テロ組織アルカイダの指導者だったオサマ・ビンラディンの殺害作戦を遂行。当時のバラク・オバマ米大統領をはじめ政権首脳と軍最高幹部らがホワイトハウスの一室に集まり、リアルタイムで送られてくる映像を凝視する場面を撮影したものだ。

 この写真公開の真の意味は何であろうか。もちろん、10年越しのテロとの戦いの成果を世界にアピールする狙いがあったことは間違いない。だが、それだけではない。上層部の人間が必ずモニターしている。そんなメッセージを現場の兵士たちに印象づけたのだ。大統領は米軍の最高司令官である。トップがみているということが分かれば、作戦に参加した兵士たちは奮い立ったに違いない。

 また、ビンラディン殺害作戦の一部始終をモニタリングできた結果、オバマ大統領の発表は迅速で正確だった。情報が錯綜しやすい危機に対処している時には、モニタリングをしっかりしていた指揮官ほどぶれずに冷静な判断ができる。

 被災の復旧などでも言えるが、「上層部がちゃんと見ている」ということは困難に直面している現場にとって励みになる。結果だけでなくプロセス(経過)もしっかり見てもらっている。そうした安心感が現場の働きを促し、不正行為を抑止する好循環につながる。

 ところで、企業の不正を生む背景の1つに成果主義の行き過ぎがある。成果主義の長短に早くから気付いていたのも軍隊だ。軍隊では通常、将兵の昇進を決める際に武功、すなわち戦場での働きに重きを置かない。むしろ訓練など部隊内における日常の言動で決めている。

 こう聞くと多くの人は驚くかもしれないが、軍隊は兵士を失いたくないからこそ、戦場での結果だけでは人材を評価しないのだ。正しいプロセスを踏んでいるかという点を非常に重視している。

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。