健康診断という「病」

職場で「がん検診」が受けられないワケ 亀田高志 氏

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 還暦から古希を迎える10年間をイメージして、20人いた男子のクラスメイトのうち3人はがんになるとしたら、どう思われるでしょうか。そして一生のスパンで考えると、がんにかかる確率は男性で62%、女性は46%、がんで亡くなる確率は男性25%、女性16%であることが分かっています。がんを患うということは、長生きすればむしろ普通のことなのです。そうすると嫌だとか怖いとか言っていられなくなりますね。

職場でがん検診が行われない理由

 がんの問題がそれほど一般的であるなら、「職場の定期健診と同時に実施してくれればよいのに」と思いませんか?

 職場で受けることが義務付けられている定期健診が着目しているのは、あくまで動脈硬化による脳卒中や心臓発作、そして結核です。実際には、画像診断や細胞の検査以外に、がんを直接検出できる健診レベルの検査項目は皆無に等しいのが現状です。もしも「いや、うちの会社はやってくれている」と言う方がいれば、それはとても恵まれた人です。ほとんどの人は、がん検診を自分で受けにいかなくてはならないのです。

 基本的に定期健診は就労区分を経て就業上の措置を行うことと、保健指導などを通じて脳卒中や心臓発作などの深刻な病を防止するものであると行政と専門家が考えている点も無視できません。生活習慣病やメタボリック症候群が定期健診で明らかになり、産業医がクリニックや病院を紹介するのも、動脈硬化による脳卒中や心臓発作を防止するという大義名分があるからです。がんを早期発見する役割や責任は趣旨が違うから、会社には課すことができないことになります。

 日ごろ、がん細胞は誰しもが持っていると説明した上で、適当な大きさのうちに切除ができるようにがん検診を受けることを私はお勧めしています。けれども、どうしても受けたくない人もいるでしょうし、「シロ」か「クロ」でしか、がん検診を考えられない人にとっては毎年、会社から強制されるのは苦痛で仕方がないことかもしれません。

 このような背景があって、これまでがん検診は会社側の義務としては行われてこなかったのです。

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