健康診断という「病」

職場で「がん検診」が受けられないワケ 亀田高志 氏

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 がんを嫌がる人が多いのは、死のイメージが未だに抜けず、長く苦しむことを恐れるからだと思います。ちなみに一番人気の脳卒中を選んだ理由は、「一瞬で楽になれる気がする。心臓発作は最後まで意識がありそうで怖いから」と答えてくれる方が少なくありません。

 脳卒中は医学的に「脳血管障害」と呼ばれ、脳の内部の血管が詰まる脳梗塞、その血管が破れる脳出血、脳の下の方にある血管にできた袋が破れるくも膜下出血があります。幸い生活習慣改善や最近の治療医学の進歩によって、脳血管障害で亡くなる方は減少しています。

 ですから「ポックリ」というイメージのようにはいかなくなっているのです。

 脳血管障害では、人間の知識や知性を司る脳の大切な部分が損傷されることがあり、無事に退院し、職場復帰できても、発病前にこなせていた高度な作業ができなくなることがあります。きちんと話すことができず、手足が不自由になるだけでなく、大切な楽しみを奪われてしまう人もいます。仕事や日常生活に戻ることができず、三大死因に並ぶほど亡くなる人が多い肺炎を併発したりして、長く苦しむ人が少なくありません。

 また、ここで尋ねた心臓発作とは、冠動脈の閉塞によって起きる心筋梗塞という病気を想定しています。心筋梗塞のときに感じる胸や背中の痛みは強烈で、病院に搬送される前に半数が心肺停止となることに触れましたが、救命された後でも日常生活が阻害されるほどの心不全が後遺症として残ることがあります。そのために長く息苦しさに耐えていくことになるかもしれません。

 一方で、がんの治療技術もめざましい勢いで進歩を続けています。もしも救命が難しくても、緩和ケアといって痛みや苦痛を和らげて終末期を良好に保つ方法も発達してきています。がんでは最後まで意識が保たれることが多く、残された時間を使って、今流行の終活を完了できる余地もあります。

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